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エイジングの影響もあるのか? シニアがWeb会議で気を付けていることとは。(上)

 ZOOMを始めとするWeb会議ツールが、市民権を得つつある。在宅勤務には必須。それだけではなく、「集まらなくてもつながることができる」オンラインツールの活用は自治体からも注目されている。京都市や名古屋市では、現に、地域における新しい「つながり」をもたらすものとして入門の手引きが市によって公表されている。では、シニア層はこの新しいツールをどのような点に気を付けて、使っているのだろうか? 本稿では、文化庁の調査データから炙り出してゆくこととする。

 そもそも、シニア層のビデオ通話やウェブ会議の経験率はどの程度なのだろうか? 図1.は、年齢階級別に、その経験率を尋ねたものだ。想定内のことではあるが、年齢階級が上がるほど、経験率は低くなっている。最も高いのが、20歳代の77.6%。最も低いのが70歳以上の13.5%。各年齢階級間での格差は非常に大きくなっている。

 60歳以上では、就業率にかなりの影響を受けていると思われる。2020年の労働力調査によれば、65~69歳の就業率は、48.4%。70歳以上では17.2%。就業者の8~9割がビデオ通話やウェブ会議の洗礼を受けていることになる。

 30~50歳代では、就業率は概ね80%以上をキープし続けているが、その割には、40歳代も、50歳代も経験率60%を下回っている。新しい働き方への順応力は、やはり若い人の方が高いと言える、ということだろうか?

それでは、気を付ける点を個々に見てゆこう。まずは、話すタイミングについて(図2.)。Web会議等で、最も難しいことの一つであると、筆者も身を持って体験している。リアルでは、気配やちょっとした動きなど、ノンバーバルのコミュニケーションが機能しているのだが、オンラインではこのあたりの機微が消えてしまうからである。それゆえ、どの年齢階級でも6割前後が、話すタイミングに気を配っていると回答を寄せている。

 他の年齢階級と10%ほど水を開けられているのが70歳以上。恥ずかしいとか、申し訳ないといった抑制力が、加齢とともに衰えてくることの表われと言えば、言い過ぎだろうか?

 図3.は、明瞭な発音に気を付けているかどうか。話すタイミングと反対に、70歳以上で最も高い数字になっている。

 加齢とともに、難聴の症状が両側の耳に同じように起こり、高い音のほうがより聞き取りにくくなる(高音障害型感音難聴)。また、さ行 は行 か行 などいくつかの子音は、高齢者で聴力が低下する。さらには、言葉を聞き分ける能力も、加齢とともに低下する。このような加齢現象を自覚していることも明瞭な発音を心がけている証左の一つではあろう。

 図4.は、映り具合や音量の設定について。音量の設定は、どの年齢階級でも大きな差はないだろうから、このグラフは、映り具合への配慮の差と考えてもよいだろう。

 この項目で、群を抜いて高いのが20歳代。その他の年齢階級はドングリの背比べだが、30歳代、40歳代と続いている。最も関心の低いのが、50歳代と60歳代。初顔合わせになる会議も多いと思われるので、もう少し気を付けても良いのではないかと、老婆心ながら思う。

 声の大きさへの配慮は、30歳代でピークに達し、以降、年齢階級が上がるほど漸減傾向にある(図5.)。各年齢階級のうち、最も低いのは70歳以上。実は、老人性難聴においては、大声で話せば聞こえるというのは間違い。大声だと声のトーンも上がるので、却って聞き取りづらくなると言われている。声の大きさに多くのシニア層が反応しないのは、経験としてその事実を知っているからかもしれない。

 話す速さに気を付ける傾向は、50歳以上のプレシニア、シニア層で顕著だ(図6.)。最も高いのは60歳代の48.7%。半数近くが話す速さに気を付けている。逆に20~40歳代の若、中年層では、会話のスピードに関して、余り頓着しないようだ。

 「ほかの人の話を最後まで聞くことに気を付けている」(図7.)では、年齢階級間の顕著な差異は見られない。強いて言えば、シニア層よりわずかに若年層の方にこの傾向が強いようだ。中でも30歳代が頭一つ抜けている。20歳代もそれに次いでいて、若年層の方が、聞き上手とは言えそうだ。

 「きちんと伝わっているか」を確認する、慎重な姿勢は20歳代が他の年齢階級を圧倒している(図8.)。「人の話を最後まで聞く」では、その傾向が強かった30歳代だが、自身が発信した情報がきちんと伝わっているのかは、案外無関心なようだ。(下に続く)

    ㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男