ウォーキングやジムでいい汗をかいている姿。現代のアクティブシニアを象徴するイメージの一典型である。だが、いつ、どこで、誰と運動やスポーツを楽しんでいるのか? 詳細な事実を知る人は意外に少ないと思う。
そのリアルなファクトを教えてくれるのが、スポーツ庁が実施している定例調査、「スポーツの実施状況に関する世論調査」だ。本稿では、平成31年(2019年)の実査結果より、「いつ、どこで、誰と」運動やスポーツに勤しんでいるのかを、年齢階級別・男女別に詳細にレポートしてゆきたい。
まずは「いつ」から。図1.は、全体(10歳代以上)と60歳代、70歳代の平日の運動・スポーツの実施時間帯を比較したものだ。
60~70歳代では、全体と比較して、午前中や昼間に多く、夜間から深夜にかけての実施人数が減っている。ここまでは、ほぼイメージ通りの結果と言えよう。意外なのは、「朝型」のイメージの強いシニア層が、全体とさして変わらないことだ。60歳代は、他を抜いているが、70歳代では全体平均を僅差ながら下回る結果となっている。
図2.は、50・60・70歳代各男女の6つのグループ間で、平日早朝の運動・スポーツ実施率をグラフ化したもの。男性と女性では、男性の方が平日早朝の実施率が高くなっている。とくに60歳代男性が高い。女性の方は、50・60・70歳代の各年齢階級間の差はほとんど見られない。
同じく午前中の時間帯を男女別・年齢階級別に比較したのが、図3.のグラフ。男女とも同じ傾向で数値もさして変わらないが、50・60歳代で女性が、70歳代で男性が数字的優位に立っている。とくに70歳代男性では、6割近くがこの時間帯に運動・スポーツを実施している。
平日において、午前中は、最も運動・スポーツが最も活発に実施される時間帯と言える。70歳代男性の58.4%は、平日の各時間帯各グループの中で、最も高い数字である。
続いて昼間の時間帯はどうだろう。(図4.) 男女とも昼間は、午前中に次ぎ、運動・スポーツが活発に実施される時間帯だが、いずれの年齢階級においても、男性より女性の実施率が高くなっている。男女とも年齢階級が上がるほど、実施率が高くなるのも、午前中と同様に認められる傾向だ。
夕方の時間帯になると、実施率は昼間より陰りが見えてくる。男女とも、年齢階級が上がるほど、実施率も上がるのだが、漸増の男性に対し、女性は統計上の誤差ほどの微増に過ぎない。そしてこの時間帯も70歳代男性の健闘が目立つ。
夜間に入れば、グラフの形状は今までと真逆になる。(図5.) 50歳代こそ、男女とも一定の実施率があるが、60歳代・70歳代と上がるにつれ、ストンと落ちてくる。70歳代ではわずかに女性の実施率の方が高い。
深夜ともなれば、さすがにシニア世代も息をひそめる。かろうじて50歳代が男女それぞれ6%、5%と気を吐いているが、それ以上となれば「希少種」であることは否めない。市場性としては著しく低いと言わざるを得ない。(2に続く)
㈱日本SPセンターシニアマーケティング研究室 中田典男
2024年3月11日
2023年9月12日
2023年6月5日