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充実かつ前向き。シニアの社会的(貢献)活動事情(上)

セルフエフィカシー(またはセルフイメージ)という言葉がある。「日常の様々な問題を解決する自分の能力に対する自信」といった概念で、アメリカにおける研究に由来する。「自分にはそうした能力がある、人の役に立っている」といった、自分に対する前向きなイメージを持つ人は老化のスピードが遅く、逆にセルフイメージの低い人や後ろ向きに考えがちな人は心身機能も低下しやすくなると言われている。
日本でも、定年退職後の膨大な時間をボランティア活動に充て、充実した時間を過ごしているシニア世代は多い。地域を中心とした社会的活動は、地域貢献につながる上に、自らの健康寿命の伸長にも寄与すると言うわけだ。

だが、シニアの一典型として定着している感のある「シニア=ボランティア」像の実態はどうなのか? 案外知られていないのではなかろうか?

内閣府からこのほどリリースされた「2016年(平成28年) 高齢者の経済・生活環境に関する調査」の中では、そのひとつのテーマとして、「居住地域での社会的(貢献)活動状況」の実態をつぶさにリサーチしている。また、「活動しない」人にもスポットを当て、その理由等を詳らかにしている。

本アーティクルでは、その興味深い内容を属性別にまで掘り下げて考察してゆきたい。

図1.は、居住地域で社会的活動を行っている人の活動内容の内訳をグラフ化したもの。活動の種別で最も多いのが「自治会、町内会などの自治組織の活動」で18.9%、次いで「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」の11.0%。この2項目のみが10%を超え、他の活動内容より突出している。

が、このグラフで何よりも目を惹くのが、「特に活動はしていない」の69.9%。地域の社会的活動に参加している人は、高齢者の約3割だという現実だ。この数字を高いと見るか、低いと見るかは評価の分かれるところだが、筆者は思ったより高率とみている。
(内閣府の調査自体、施設入居者は対象から除外しているが、それでも在宅介護や介護予備軍人口は含まれている。母集団からそのような人まで除外すれば、極めて乱暴に推察すればその7割程度。そう考えれば母集団の40~45%程度は、活動を行っていると考えられる。これは決して疎かにできない数字である)

「居住地域で社会的活動を行っている人」を属性別に見るとどのような特徴が浮かび上がってくるだろうか?(図2.)
注目したいのは、有職の人の方が無職の人よりも活動実施率が高いこと。必ずしも無職の人が「時間消費」のために行っているのではないことがわかった。

性別では男性が女性を10ポイント以上上回っている。年齢階層では、男女とも65~74歳のいわゆる前期高齢者が地域の社会的活動を牽引していることが明らかになった。

活動内容で抜きんでていた二つの項目、「自治会、町内会などの自治組織の活動」、「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」を属性別に見るとどのような結果になるだろう?(それぞれ図3.及び図4.)

「自治会、町内会などの自治組織の活動」の属性別内訳は、社会的活動全般とほぼ同じような傾向を示した。即ち、有職者優勢、男性(とくに65~74歳)優勢という傾向だ。

異なるのは、女性の年齢階層だ。社会的活動全般では、女性も男性同様、65~74歳がトップだったが、「自治会、町内会などの自治組織の活動」では、僅差ながら60~64歳がトップに躍り出た。

一方、「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」では、それらとやや異なる結果が出た。有職が無職を上回り、男性が女性より優勢なのは変わらないが、その差は僅差である。

注目すべきは、男性の年齢階層。75歳以上が最も高率なのである。ここからは「老いる」という言葉とは無縁な人物像がありありと浮かび上ってくる。(中に続く)

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男