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シニアのリフォームに必要な視点(2)

シニアのリフォームは「今の住まい」を生かす

シニアのリフォームや新築に携わる中で坂根さんが気づいたことは、「住まいは、住んでいる人の人生そのもので、住んでいる人の頭の中をあらわしている」。住まいを見ているとその人の生き方がみえてくる、といいます。

「たとえば手入れが行き届いている住まいの施主さまは、リフォーム計画の確認なども、きちんとしておられます」

坂根さん自身、その違いを感じられるそうです。「日々に追われて家の中が雑然としてくると、頭の中も整理されていない感じがします。でも週末に掃除をしてすっきり片付けると、不思議と頭の中もすっきりしてくるのです。」

「それまでの人生の積み重ねが、今の“おうち”をつくっているでしょう。 おうちはその人の人生そのものだから、できるだけ傷つけたくない。“子ども家族と同居するのでもっと空間が必要だ”、とか“体に不自由が生じたので今の家では危険だ”という場合でも、全面的な改築より、まず、今の住まいを生かす方法を考えます」

「たとえば80代でリフォームを希望された女性のおうちは、亡くなったご主人と建てたものでした。そこで積み重ねたご夫婦の時間も住まいの一部。そう考えると、大部分を壊してなくすコトには哀しさや寂しさを感じました。
大掛かりなリフォームでもご主人と建てた住まいを残す方法はないかと考え、もとの住まいのためにつくったという本棚を使って新しく神棚をつくりました。素材の一部でもリフォーム後の住まいに残すことができれば、施主さまの気持ちの中でそれまでの暮らしを引き継ぐことができます」

要介護の方のお宅は特に、大きな変更はしないほうがよい

高齢者の場合、長年暮らした住まいに慣れておられることから、大規模なリフォームはできるだけ避けたい方が多いようです。
「リフォームするために必要な住まいの整理、リフォーム中の生活、リフォームした住まいでの新生活において、高齢者には大きな負担が発生します。しかも、リフォームが大きければ大きいほど変化も大きく、慣れるための時間や労力が必要です。便利な器具を導入すれば、その道具に慣れる時間も努力も欠かせません」
得られる利便性より新しいものに慣れるためのストレスのほうが大きい場合は、現状維持を選ぶことも考えるべきかもしれません。


手すり部材については多種類を社内に確保し、打ち合わせ時に持参。施主がリフォーム後の住まいに対してイメージが沸きやすい。

年齢、健康状態に関わらず、
「家が一番好き」になる住まいづくりをめざす

長く住まれているおうちのリフォームを多く手がけていると、シニアの方々が抱える住まいの課題について見識が深まります。新築プランの仕事では、そこから得られた知見を生かしています。
「たとえば門灯はセンサーライトにして、照明はLEDで取替え頻度を少なくする。年齢を重ねるとひと手間が億劫になるので選択していますが、その利便性は高齢者に限りません。予算を抑える場合は、新築時の洗浄機能付きトイレは乾燥機能なしで、将来、交換が必要になったときに乾燥機能付きトイレにする方法もあります。」

住む人の家族構成や健康状況が変化すれば、住まいも変化させる。「ひとがしゅ」さんでは、将来を見越しながらその時期にベストな住みやすさを考えています。
介護が発生しているお宅なら、介護される方、介護する家族はもちろん、ヘルパーさんのためにリフォームを行うこともあります。
住む方が「家が一番好き」と言う住まいづくりは、施主と共に住まいに長くつきあっていくことで実現します。

多くの施主から礼状が届きますが、中でも坂根さんの心に特に残っている一文は、「家に帰ることが楽しみになり、日々、住まうありがたみを実感します」。
坂根さんが取り組んできた「人が主人公」である家づくりが、住む方に届いているようです。

***【資料の紹介】*************************

歳を重ねても介助の手が必要になっても、できる限り長く自宅で気持ちよく過ごしたいと願う方は増加傾向にあります。

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平成27年版 高齢社会白書より

 

株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子