(承前)
高齢単身者の「現在の楽しみ」を調査したものが図7.のデータ。
男女ともテレビ・ラジオが最も支持されている。わずかに男性の比率が女性を上回っている。同じマスコミ系でも紙媒体の新聞・雑誌では男女間でやや開きが出てくる。総じて男性はマスコミ好きと言えよう。
一方、女性が男性を大きく引き離しているものは、「交際」「買い物」「飲食」「屋内の趣味」。総じて女性の「おひとりさま」は外向き志向だ。コミュニケーション能力の高さや人脈の幅広さも与っていると思われる。
このような「楽しみ」を下支えするのが経済的ゆとりなのだが、この点でも「おひとりさま」シニアにはゆとりがある。(図8.)
「現在の経済的な暮らしぶり」について、「全く心配ない」「それほど心配ない」と回答した人は全体の集計で76.1%にも上る。「家計にゆとりがない、家計が心配」な人は少数派で、安らか過ごしている様子が窺える。
性別、年齢層別では、それほど顕著な差があるわけではないが、性別では女性に、年齢層別には75歳以上にゆとりを持つ人が多い結果となった。
かといって、年齢的な要因による不安が決して霧消しているわけではない。将来の不安について尋ねた設問(図9.)では、約6割の人が「健康や病気のこと」に不安を感じており、「寝たきりや介護」についての不安を抱える人も4割強に上る。
「生活のための収入」に関する不安は案外少なく、2割にも満たない。
このデータで注目したいのは過去との比較数字だ。
「健康や病気についての不安」を抱える人は平成14年の82.5%から大幅にダウンしている。高齢になっても健康を維持できているという喜ばしい結果になった。
これと同様の不安要素である「孤独死」についての感じ方も、「身近に感じる」と「身近に感じない」の双方がほぼ拮抗しているものの、「身近に感じない」方が僅差で優勢になっている。
多くの独居老人にとって「孤独死」とは、最早他人事に近くなってきているようでもある。(図10.)
「おひとりさま」シニアのこういった、肉体的、精神的「強さ」は要支援要介護状態になったときどこで暮らしたいかという設問の回答にも如実に表れている。(図11.)
さすがに、排泄や入浴などに全介助が必要となれば、特養などの介護施設を望んでいる人が多数派ではあるが、「日常生活を行う能力が著しく低下」している状態であっても、3人に2人は「現在の自宅」で過ごすことを望んでおられる。
関連設問の「今後誰と一緒に暮らしたいか」(図12.)の回答では「今のまま一人暮らしでよい」とする人が全体の76.3%に上っている。平成14年との比較では約5%の増加。逆に子との同居を望む声は約7%近く減少している。
高齢単身者世帯はますます増加の一途をたどることは想像に難くない。ただそのイメージは、今までのステレオタイプではなく、まったく新しいものにとって代わるだろう。
「おひとりさま」シニアにどのような生活提案を行えるか? そこに有望な新市場が広がっている。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年11月11日
2024年6月24日
2024年6月3日