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サ高住。供給側も需要側も「サービス内容」へ配慮を!

高齢者の住まいの新しい受け皿として、「サービス付き高齢者向け住宅」(以降「サ高住」と略)が期待されている。
かつては、高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)・高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)などと分かれていたものが2011年に一本化されたものだ。

サ高住は、言わば「高齢者向け賃貸マンション」。一日1回、居住者の安否確認が義務づけられているが、24時間体制での医療・介護サービスはない。オプションとして追加契約が必要になるが、どのようなサービスが用意されているかは、施設によって異なる。

このサ高住の伸びが衰えを知らない。(図1.)2012年3月に31,000戸余りだった戸数が、2015年12月には、191,000戸。わずか3年9カ月の間に6倍を上回る急成長ぶりだ。その入居率も80%近くと高率であることもあり、不動産の投資先としても取沙汰されることが多い。
入居者にとっても、利用権方式ではなく賃貸借方式で契約する施設が多いので、多額の入居金を必要とせず、「入居者の居住の権利」が確保しやすいというメリットがある。

図1

ところがこのサ高住については、今ひとつイメージが具体的にならない。
その理由のひとつが「サービス付」という言葉。「サービス付」とは謳ってはいるが、サ高住で提供されているサービスは「安否確認」と「生活相談」であり、それ以外のサービスは外部との別途契約になる。

地方公共団体や社会福祉法人が設置主体になる老人ホームと異なり、営利目的の民間が事業主体になることが多く、事業者の法人等種別では、株式会社組織が6割弱を占めている。(図2.)それでも業種別に見れば、介護系・医療系の事業者が全体の8割を占めている。(図3.)
このような出自の多様性が、サービスの多様化につながりイメージの輪郭を曖昧にしている一因と言えるだろう。

入居者の心身の状態もサ高住は多様である。
野村総研の調べでは、自立から要介護2までの軽度要介護者の割合は64.7%。これは有料老人ホームの54.0%よりかなり上回っている。とは言え、認知症判定基準Ⅱ以上の「日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られる」入居者も40%に上る。
このような入居者の【幅】の広さも、サ高住のわかりにくさの一つではないだろうか?

図2

図3

住宅設備に目を転じてみよう。
サ高住には、基本的な設備である居室のほか、施設によっては食堂と共同リビングを兼用する共同生活室などの設備が備えられている。居室には台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室などが設置されている。とは言っても、完備率はまだまだ低く、わずか22%に過ぎない。(図4.)

図4

サ高住の1戸当たりの床面積は原則、25平方メートル以上とされているが、十分な面積の共同生活室がある場合には、18平方メートル以上でもよいという緩和条件もある。従って、住戸面積が広くなるほど完備率も上昇している。(図5.)

図5

図6.は「高齢者向け住宅の入居者の契約、費用の支払い等に関する不満事項」を問うたもの。
グラフには記さなかったが、「特に不満はない」が当然ながら最も多く、71.5%の入居者が現状に満足しているが、「サービス内容について契約時の説明が不十分、または聞いてない」と答えた入居者も9.1%に上る。10人に1人が不満を持っているわけであり、これはかなりの高率だと言わなければならない。

図6

サ高住の持つ2つの問題点のうち、「常駐する場所が確保できない空き家等の活用が困難」という点については、「サービス提供者が近接地に常駐でも可」と条件が緩和された。もうひとつの問題点「サービス提供の形骸化の懸念」については、100%は無理にしても、ある程度は説明能力、伝え方によってカバーできる。
事業者の方々は、情報提供やコミュニケーション力の向上により一層、力を注いでいただきたいものである。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男

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