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シマ研の本棚-“壁”は年齢ではなくデジタル 「シニア」でくくるな!

原田曜平 著 日経BP社刊 1800円+税

単行本302ページ

 帯の裏には「団塊の世代がもたらす2025年問題はシニアマーケの“好機”」という文言。表には「“壁”は年齢ではなくデジタル」と結論づける言葉が並ぶ。著者はマーケティングアナリストで芝浦工業大学デザイン工学部教授の原田曜平氏である。

 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障や医療・介護の面で様々な問題が起こるであろう、いわゆる“2025年問題”。同時に最大級の後期高齢者マーケットが生まれ、その攻略のカギを握るのは「高齢者とデジタルの関係である」との論を本書では展開する。

 著者は60代・70代・80代の高齢者の実態調査を行い、「デジタルを使いこなしている高齢者ほど、生活がアクティブであり健康である」と推察する。さらにデジタル高齢者は可処分所得が高く、消費への意欲も旺盛である、との調査結果から、デジタルの壁の向こうに、シニアの大きなマーケットが広がっているのではないか、との結論を導き出す。

 またデジタル高齢者攻略のポイントとして、「デジタルリテラシー」の高低によって、以下の8つのペルソナが存在し、そのペルソナに応じたマーケティング策を展開することが重要、と説く。
 以下デジタルリテラシーの高い順に見たペルソナ像である。
  ① 健康意識が高く、レジャーを楽しむ「引退人生謳歌おじ」
  ② 社会貢献意欲の高い「ボランティアおじ」
  ③ ミーハーで美容意識の高い「生涯アクティブウーマン」
  ④ 介護の合間にメディアで息抜き「老老介護者」
  ⑤ 孫が唯一の楽しみ LINEで家族とつながる「世代間デジタル」
  ⑥ 家族に依存し家族消費を行う「家族経由デジタル」
  ⑦ 低意欲・少コミュニティー「孤独デジタル難民」
  ⑧ 介護施設で生活が完結する「非自立デジタル難民」
各ペルソナごとのアプローチのポイントは、本書を参考にされたい。

 本書では、シニアのペルソナ区分を、“デジタル”という切り口で、8つに分類しているが、当シニアマーケティング研究室では、シニアを“変化に伴うニーズ”という側面から、「アクティブシニア」「ディフェンシブシニア」「ギャップシニア」「ケアシニア」の4つの類型に大きく分類。その類型ごとにニーズをマッピングすることで、戦略的に見ることができるフレームを開発している(「whitepaper【27】シニア市場の細分化及びニーズ発見のための戦略的フレームワーク 【改定第3版】」)。広大なシニア市場をとらえるための一つの視点として、合わせて参考にしていただきたい。

 シニア分類の手法は違えど、共通しているのは「“シニア”と大きなひとつの区切りで見ていると、判断を誤る」という点である。「豪華客船に乗ってクルーズするアクティブシニア」の幻想に踊らされないために、“分けて考える”ことの重要性も教えてくれる良書である。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 若林栄司