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高齢期は延長。シニアLTVの開発は? 

 年々、日本人の平均寿命は延びている。平均寿命の延伸は、平均余命の延伸でもある。もちろん余命は何歳でみるかによって異なるが、仮に65歳で平均余命が何年なのか? 
 各年の簡易生命表から、平均寿命の推移とともに65歳の平均余命の推移をグラフにした。 

厚生労働省 各年 簡易生命表より作成

 さらに最頻死亡年齢も少しずつ後ろにズレてきている。2020年は男性88歳、女性93歳。これを65歳の方から見ると、最頻死亡年齢まで男性は23年、女性28年あることになる。

男女共同参画白書 令和4年より作成

 つまり65歳時の平均余命と比べて、さらに長い時間を持つ可能性がある。もちろん、より長生きする人もおられる。それほどまでに、高齢期の保有時間は伸びている。 
 高齢期をどう生きるかは多くの人にとって大切なテーマであり、対象となる時間は拡大している。事業者にとっては高齢期のLTV*をどう提案するかが、高齢者市場開拓において欠かせない視点。 

*LTV(lifetime value)とは顧客生涯価値:顧客が自社との取引を開始してから終わるまでの間に、どれだけの利益をもたらすのか、その価値の総計

加齢に伴い、シニアは変化 
人生において多くの人は4類型を経験

 当室ではシニアは「ひととくくりでは捉えることができない。4類型に分けて考える」ことを提唱している。
 たとえば現在、「アクティブシニア」「ディフェンシブシニア」「ギャップシニア」「ケアシニア」は以下のような内訳で存在している。 

※1 高齢者人口:65歳以上 3,626万人(人口推計 令和4年3月1日概算値 総務省統計局)
※2 アクティブシニア人口:就業人口:65歳以上 912万人(令和3年(2021年)労働力調査基本集計長期時系列表 総務省統計局)
※3 ケアシニア人口:要介護等認定人口:65歳以上 677万人(令和4年(2022年)1月末日暫定値 介護保険事業状況報告 厚生労働省)
※4 ギャップシニア人口:883万人(高齢者人口からアクティブシニア、ケアシニアを減じた数)÷1000×433.6(有訴者率)=883万人
有訴者率:65歳以上 433.6千人対(男性:413.2/女性:450.3)(令和元年(2019)年 国民生活基礎調査 厚生労働省)
※5 ディフェンシブシニア人口: 2037万人-883万人(ギャップシニア人口)=1154万人 

〇アクティブシニア:就労している。健康に自信を持っている。仕事、学び、おしゃれや社会との交流にも積極的。 
〇ディフェンシブシニア:非就労。多くは、できれば仕事をしたいと思っている。健康に問題はないが特に自信があるわけではない。非就労なので相対的に趣味や交流の価値が高い 
〇ギャップシニア:非就労。身体機能に何らかの不自由が発生していて、不活発生活をそのままにしておくと、ケアシニアは移行する 
〇ケアシニア:介護保険認定を受けている。相対的に、交流や社会生活の価値が一層高まる。その維持が生きる力につながる 

 このように状態・状況が異なるシニアは、そのニーズも異なる。 

 「アクティブシニア」「ディフェンシブシニア」「ギャップシニア」「ケアシニア」それぞれにおけるニーズの方向性を図化すると下記のように示すことができる。

※2~5の注釈は、上のグラフと同様

 しかしこれらは社会全体でみた高齢者層を分類した、一時点での見方。一人の人生として見ると、下記のように変化を伴う。

 高齢期においてできることや生活は大きく変わり、ニーズも変わる。働いていた人が仕事を辞めて生活の中心が都心から近隣に移ったり、アクティブに行動していた人に不自由が生じて回復ニーズが生じたり、支援ニーズが発生したりする。 
 ただし類型はあくまで状態・状況の分類。状態・状況により発生するニーズはこの分類から想起される一方、当然ではあるが、パーソナリティから発生するニーズはこれら類型とは関係なく存在している。アクティブシニアの類型にあっても、文化系嗜好の方もいれば運動部嗜好の方も、マニアな趣味に没頭している方もおられる。同様にギャップシニアにおいても文化系嗜好の方もいれば、運動部嗜好の方もおられるだろう。
 つまり好きなものは状態や状況が変化しても、変わらない。心底好きなものは好き。問題なく楽しめるなら、楽しみたいと思うし、欲しいものは欲しい。 

 むしろ状態・状況に応じて諦められがちなテーマにこそ、「今もやっぱり楽しみたい」という、より強い望みが生まれるかもしれない。 

 身体状況や生活環境の変化で諦めて、仕方ないと消去していくウォンツに対する提案。嗜好によるニーズに対しては、状態・状況に応じた提案が望まれる。 

業界によっては進んでいる
高齢者のLTVの開発と提案 

 加齢に伴う変化の中でも身体的変化に対して、化粧品業界の取り組みが進んでいる。 
 これまでのアンチエイジング的発想を超えて、化粧により前向きな気持ちを持たせてくれる効果「化粧療法(メイクセラピー)」に着目して、高齢者の自立支援に向けた提案が行われている。メーカーでは独自に実施プログラムを開発、提案している。 

 旅行業界では対象人口が多い高齢者層~アクティブシニア、ディフェンシブシニアやギャップシニア~に対しては大手による商品開発が行われ、より専門性が求められるケアシニアに対しては専門サービス事業者も登場している。 

 クラブツーリズムによる「ゆるり旅」は参加人数の制限でバス内のゆったり感、介護資格を持つスタッフ添乗による見守りや支援、行程のゆったり感、レストランのテーブル・椅子確約(座敷がない)など、さまざまな点から設計。 
 “旅行への「不安」「不快」を「安心」「快適」に”というコピー通りの内容で、そのゆったり具合にも「大」「中」を設けている 。
 トラベルドクターは重度の病気を抱える方でも、安心・安全・快適に旅行ができる環境をつくっている。現在は東京都出発を想定としているが、医師、看護師、介護士、リハビリスタッフ、介護タクシー等、医師主導の専門性の高いスタッフが利用者の考えを聞き旅行を計画、行程をサポート。主治医や現地の医師との協力体制、航空会社や宿泊施設などとの調整もを整え、旅をしたい願いを叶えている。 

加齢は誰にでも訪れる 
変化は新しい提案のチャンス 

 高齢者人口の増加を念頭に、彼らのニーズをつかもうと数多の企業が高齢者市場に取り組んでいる。しかし加齢は誰にも起こり、変化への対応が迫られる。今、目の前にいる顧客も歳をとっていっている。
 自社の顧客の変化を察知し、関係性を保つための提案を続ける。コミュニケーションと臨機応変さを兼ね備えるために、どれだけの企業が取り組んでいるだろう。 
 加齢によって生じる諦めや変更に対して、「諦めなくていいですよ」「代わりにこれはいかがですか?」という発想はどれくらい生まれているだろう? 
 たとえば長年の顧客が「足が不自由になって自分でお店に行けなくなりました。娘がネット通販で買ってくれるもので構いません」と、去ってしまうのをそのままにすることは仕方ないのだろうか? 

 仕方ない場合もあるかもしれない。しかし何か提案があるかもしれない。 
 顧客と付き合い続ける知恵が、高齢期のLTV提案が、高齢者人口が巨大化する現在・未来に欠かせない。 

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子

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