シニアの趣味・娯楽には、少数ではあるが、年齢階級の影響が少ないものや、年齢階級が上がるほど、行動者数も多くなるものもある(パターンC)。順にざっと見てゆくことにしよう。
最初に挙げるのは、民謡や日本古来の音楽を含む邦楽(図26.)。行動者数で見れば、70~74歳の年齢階級が最も多いが、行動者率で見れば、75歳以上の3つの階級で2%台と、60歳代を凌ぐ値となっている。この分野は、60歳代にはあまり興味のない趣味・娯楽なのかもしれない。
図27.はコーラス・声楽。こちらも邦楽と同様の傾向を示している。即ち、60歳代と70歳代以上の間に小さな溝が横たわっているのだ。数が多いのは70~74歳だが、驚くことに行動者率は、80~84歳の年齢階級が3.9%と最も高くなっているのだ。25人に1人が嗜んでいると考えるとこの数値は無視できない。
書道(図28.)もコーラス・声楽と似た傾向で、60歳代と70歳代以上の間に小さなキャズムが横たわっている。特筆すべきは行動者率。なんと85歳以上の年齢階級が最も高く5.1%。次いで80~84歳の5.0%で、高齢上位の2つの年齢階級で5%を超えた。年齢を問わない趣味・娯楽なのである。
詩・和歌・俳句・小説などの創作(図29.)ともなると、高齢上位の年齢階級での行動者率はさらに高くなる。書道と同様、6つの年齢階級の中で、85歳以上が最も高く、6%にも上る。これは60~64歳の3倍の数字だ。文字や言葉に関する趣味・娯楽では、60歳代と80歳以上で、嗜好が大きく異なることがわかって興味深い。
最後にご紹介するのが囲碁(図30.)。明らかに、高齢上位の傾向が出た。行動者数が最も多いのが、80~84歳。行動者率が最も高いのが85歳以上と、80歳以上に人気のある趣味・娯楽となっている。囲碁・将棋と一括りにされがちな趣味だが、将棋では60歳代も比較的行動者が多かったが、囲碁では非常に少なくなっている。
以上、趣味・娯楽の種類ごとに、シニア層の行動者数と行動者率を見てきたが、各年齢階級で人気のある趣味・娯楽は何だろう? 年齢階級別に上位5つのランキングをまとめてみた。一気にご紹介することにしよう。
いくつかの傾向が見て取れる。
1.60歳代の2つの年齢階級では、映画館以外での映画鑑賞の行動者数が最も多く、70歳代以上の3つの年齢階級では、園芸・庭いじり・ガーデニングの行動者数が最も多い
2.60歳代の2つの年齢階級では、スマートフォン・家庭用ゲーム機などによるゲームが上位5位までのランキングに入っているが、70歳以上の3つの年齢階級ではランキング外である
3.80歳代以上の2つの年齢階級にのみ、編み物・手芸が上位5位以内にノミネートされている
乱暴にまとめると、60歳代ではデジタル系の趣味・娯楽が盛んだが、80歳を過ぎるとおそらく女性を中心に編み物・手芸が盛んになってくる。月次な結論だが、同じシニア層でも、趣味・娯楽に関しては、年齢階級に応じて、極めて多様だということだ。
株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年3月11日
2023年9月12日
2023年6月5日