昨年10月、シニアマーケティング研究室では、プレシニア層(50歳代)男女1,000人を対象に、デジタルツールの活用実態を調査した。調査内容は、メディアへの信頼度、SNSの活用実態、スマートフォンとの付き合い方など、多岐に渡る。その中から本稿では、プレシニアのスマートフォンの活用実態や使いこなしぶりを垣間見ることにしてゆきたい。
プレシニア層と言えば、日本のインターネット元年と言われる1995年には、20歳代から30歳代前半という年齢。社会人としてかなり早い時期に、デジタルの洗礼を受けた年代でもある。それだけに上の世代とは大きく異なり、DXと親和性の高い最初のシニアになるだろう。シニアマーケティングもデジタル主体になるのか、今後を占うにおいても、いくつかのヒントを提供できると思う。
図1.は、プレシニア層が「どのようにスマホを『携帯』しているかを尋ねたもの。全体の中で、ダントツなのが「出かけるときには持って出る(必要な場面で使う)」という回答で、51.2%に上った。のめり込まず、疎遠にもせずという、中庸で節度ある使い方であることがわかる。一方で「持っていない」も一定数存在し、100人のうち12人はスマホを持っていないという結果になった。
この結果は、性別・年齢階級別のセグメントで異なるのだろうか? 図2.は、50~54歳男性のセグメントを切り出したものである。
このセグメントの特徴は、「家の中でも持ち歩いて、しょっちゅう見ている(ないと不安)」のスコアが、性別・年齢階級別の4つのセグメントの中で、最も高くなっていることだ。(ないと不安)、(片時も離さない)といった、言わば「スマホ依存症」(?)が20%強、つまり5人に1人も存在するのだ。一方で、スマートフォンを持っていない人も、13.6%と全体の数値よりも高くなっている。(これは、年齢階級よりも、男女差に起因する。スマートフォンの保有率は、女性の方が3.4%高くなっている。)
図3.は、同じ年齢階級の女性のセグメントの結果。のめり込まず、疎遠にせずという節度ある付き合い方が多数派なのは、男女間で傾向としては変わらない。ただスコアでは、「出かけるときは持って出る(必要な場面で使う)」という回答が、同年代男性を4.4%上回っている。一方で、(ないと不安)、(片時も離さない)の合計は16.8%と、3.6%下回っている。同年代男性に比べて、より「堅実で、節度ある」使い方をしていることがわかる。
また、このセグメントでは「(スマートフォンを)持っていない」と回答した率が、9.6%と、10%にも満たない。4つのセグメントの中で保有率が最も高いセグメントであることも特徴的である。
50歳代前半と後半では違いがあるのだろうか? 男性から見てみよう(図4.)。グラフの波形を見る限り、55~59歳と50~54歳で際立った違いは認められない。ただ、細かく見ると「家の中でも持ち歩いて、しょっちゅう見ている(ないと不安)」のスコアは、異なる様相を見せる。50~54歳では、12.8%に上るのに比べ、55~59歳では、7.2%とスコアを下げているのだ。5歳刻みの年齢階級差で、このような差が現れることは、ある意味注目に値する。スマートフォンとの親和性に関して、こと男性では、54、55歳前後が分水嶺になっているのかもしれない。
50歳代前半と後半の違い、女性ではどうだろうか。55~59歳女性(図5.)で特徴的なのは、「出かけるときには持って出る(必要な場面で使う)」のスコアが、性別・年齢階級別の4つのセグメントの中で最も高く、53.6%にも上っていることだ。最も節度ある付き合い方を身に着けているセグメントだとも言えよう。
また概して女性では、50歳代前半と後半の差は男性に比べて微々たるものであり、男性のように半ばに分水嶺が横たわるとは言えない結果になっている。50歳代全般を通じて冷静で中庸な付き合い方を身に着けているように筆者には感じられる。
株式会社 日本SPセンターシニアマーケティング研究室 中田典男
2023年11月24日
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