令和三年三月、文化庁文化審議会国語分科会は、「新しい『 公用文作成 の要領』 に向けて 」というレポートを公表しました。一見、堅苦しい内容のように見えますが、そこには高齢者向けの作文技術の粋が詰まっています。その序文に拠ると、広報などを目的とした文書類やウェブサイト記事なども「公文書」の範疇に属することも視野に入れられています。
レポートの内容は、表記や用語の基本原則を押さえながら、第3部として「伝わる公用文のために」というタイトルで一項が設けられています。その中に、重要なポイントが眠っています。
レポート全体40ページの中から、本稿では、そのエッセンスとして10の項目に絞り込んで、紹介しています。本報告の一部を引用する一方で、当研究室の出版物から、一部補っているところもあります。
シニアにわかりやすい文章は、みんなにわかりやすい文章です。この10ポイントを確
実に押さえることで、わかりやすさと伝わりやすさは格段に向上します。
シニアに伝える、シニアにわかる
作文技術10のポイントとは
1.文を短くする
2.文の論点は一つにする
3.三つ以上の論点を並べるときには箇条書を利用する
4.主語と述語の関係が分かるようにする
5.接続助詞や中止法を多用しない
6.修飾節は長いものから示すか、できれば文を分ける
7.二重否定はどうしても必要なとき以外には使わない
8.読点の付け方によって意味が変わる場合があることに注意する
9.同じ助詞を連続して使わない
10.係る語とそれを受ける語、指示語と指示される語は近くに置く
では、それぞれのポイントを原文をみながら解説しましょう。
1.文を短くする
◆原文◆
長い文は、句点や接続詞を使い、また長い修飾語・修飾節を別文に移すなどして複数の文に区切る。適当な長さは一概に決められないが、50・60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよい 。
◇解説◇
公文書では、一文50~60字が一つの基準です。広告コピーのような場合は、さらに短いほうが適切です。一文40字以内を目安にしましょう。
ちなみに夏目漱石の『坊っちゃん』は、一文の文字数が平均35文字です。志賀直哉や川端康成の代表的な小説も、平均33~35文字で収められています。小学6年生の教科書も35文字程度です。
これらはあくまで平均ですので。文字数の多い文もあれば、短い文もあります。一文の長さに長短があれば、文章にリズムが生まれ、読み進みやすくなります。
一文の文字数と同時に考えておく必要があるのが、1行の文字数です。横書きの場合、22~25文字が理想ですが、多くとも30字以内に収めておきましょう。高齢者の視野幅を考慮することも必要です。
2.文の論点は一つにする
◆原文◆
一つの文で扱う論点は、できるだけ一つとする。話題が変わるときには、文を区切った方が読み取りやすい。 また、一文の中に主語述語の関係を幾つも作らないようにする。
例文
在留外国人数は、約200万人を超えており、
中長期的に在留する外国人が増えている。
↓
在留外国人数は、約 200万人を超えている。
このうち、中長期的に在留する人が増えている 。
◇解説◇
一文一義(いちぶんいちぎ)という言葉があります。ひとつの文章にひとつの事柄だけを書くことです。
ひとつのセンテンスにたくさんの事柄を詰め込むほど、文の構造が複雑になり、読み手を混乱させる原因になります。思いつくままに書き進めていくと、このような文章になりがちです。
原文の悪い例は、それほど悪文ではなく、すんなり理解できる範疇です。それでも、客観的な人数と、最近の傾向というトピックが混在しています。一文一義のルールを守れば、よりわかりやすくなります。
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