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white paper【23】「ワーキングシニア10のキーワード」(シニアを市場とする企業編)を公開しました

 本稿を発行するにあたって
 2020年10月から12月にかけて、当シニアマーケティング研究室では、ワーキングシニアの就労実態と就労意識についての定量及び定性調査を実施しました。その中で多くの興味深い結果が得られました。暦年齢を基準とした、現役vs老後・余生という概念は、意識の上では最早過去のものになりつつあり、定年も形として残るが「働ける間は働くが当たり前」というリタイアレス時代が来ているということが、今回の調査から明らかになりました。

 本稿は調査結果から、シニアを市場とされている企業さま、これからシニア市場に向けて、事業を展開しようとしている企業さまに、ぜひ知っていただきたいポイントを、10項目に厳選してそれぞれ考察を加えたものになっています。

 貴社の新規事業開発、マーケティングの一助となれば幸いです。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男

1.「60歳以上」は一律ではない
2.勤労所得は「集中→分散→そして二極化」
3.「第3の収入」を得ている人は意外に多い
4.稼いだお金は食費に回る
5.意外に多い、ローン未完済
6.収入を交際費に充てる傾向は女性上位
7.稼いだお金は食費に回る
8.働いても、他の時間は減りません
9.75歳でフルタイム就労回帰
10.百花繚乱。70~74歳女性の働き方

 10のキーワードの中には、「やはりそうか!」と首肯できるものと、「意外だ!」と気づかさ
れたものが、混在しているかと思います。

 それでは次ページから、エビデンスとともに、それぞれのポイントを考察してゆきたいと
思います。

 一言でワーキング・シニアと言っても、性別・年齢別に全く異なる様相を呈していることが調査の結果明らかになりました。

 図1.は60~64歳に男性に働く意義を問うたもの。「所得」が圧倒的な1位を占めていることがわかります。この層の多くは、60歳定年後の雇用延長期間にあるか、もしくは、65歳定年を間近に控えた人たちでしょう。
 おそらく、その勤務観は、50歳代のころと、それほどの差はなく、家や家族を守るための勤務だと考えるのが普通ではないかと推察します。
 従来なら50歳代の職業観が、人生100年時代を迎え、後ずれしきているのかもし
れません。

 図2.は70~74歳女性のケース。「所得」が同じく1位ではあるものの、60~64歳男性に比べ、就労に対する価値観の振れ幅が、大きくなっています。就労に関して多様な意義を感じていることが窺えます。
 このように、職業観や働く意義のみを取り上げても「働くシニア」はワンパターンでは
ないということがお分かりいただけると思います。

 図3.は、年齢階級別に勤労所得額の分布ですが、際立った特徴があります。60~64歳では41万円以上に集中、70~74歳では収入帯がバランスよく分布、そして75歳以上になると、所得が多い方と少ない方に二極化しているのです。
 年齢だけで区切るのはマーケティングとして乱暴ですが、どの層のどの収入帯をターゲットにするかは、重要なことです。シニア市場をよりきめ細かく見た上で、切っ先鋭いマーケティングを展開することこそ、これからはさらに重要になりそうです。

 勤労所得や年金収入以外に収入のない人は、300人中202人。全体の3分の2に上ります。多くが「日本的雇用環境」下で、仕事をしてきた人にとって、この数字は想定内でしょう。しかし、見方を変えれば、それ以外の「第3の収入」を得ている人も、全体の3分の1、約100人に上ります。決して少数派ではありません。
 その金額帯は、5万円以下が大半を占めています。。「小遣い程度」の額かもしれませんが、この額がフローに回せるとなれば、大きな福音と言えます。

 働き方改革が提唱されてすでに久しいですが、フルタイム、パートタイム以外の多様な働き方も生まれつつあります。すき間時間とすき間ジョブをマッチングさせる取り組みなどは、今後ますます盛んになるでしょう。
 こういう社会の動きにキャッチアップしてゆくことこそ、これからは大切です。

 「就労によって得た収入を何に使うか」この回答として最も多かったのが食費です。75歳以上男性を除けば、すべて、全選択肢の中で、第1位を占めています。
 とくに60~64歳女性では40名のうち、28名が「食費」を選択しています。60~64歳男性、70~74歳女性も26名と高スコアになっています。

 高齢になれば、食事の量も若い人に比べて減ってきます。少しずつ、良いものを食べたいというプチ贅沢への思いが反映されているのでしょう。
 あるいは、食は運動と並ぶ健康の基本要素ですから、健康意識の上でも、良いものを食べたいという意識が働いているようにも推察できます。

 介護食や少量パック以外に、シニアの琴線に触れる食をどのように開発・展開するかは、隠れた重要テーマの一つです。