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50歳代男性が危うい! 食生活の改善実態。

 健康の両輪、食生活と運動。その中の食生活の改善において、50歳代の意識や行動が他の年齢階級に比べ、パフォーマンスがはかばかしくないことが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」等から明らかになった。プレシニア世代とも言える50歳代の食生活の改善実態を本稿で概観してゆくことにする。

 図1.は、「食生活に問題ないので、改善の必要はない」と答えた男性の年齢階級別に見た割合。平たく言えば「食習慣に自信あり」の比率だ。

 最も現状を肯定しているのが、70歳以上の高齢者。30%超と、他の年齢階級に大きく水を開けている。次に高いのが、24%の20歳代、そして60歳代の19.5%と続く。概ねU字カーブを描いて、30歳代、40歳代と徐々に%を減じ、60歳代以降盛り返すというパターンになっている。

 このU字の底に位置するのが50歳代。「食生活に問題なく、改善の必要なし」と胸を張って言えるのは、全体の13.8%。裏返せば、残りの86.2%は、食習慣に何らかの問題を抱えているのだ。

 では、女性はどうか? 男性と異なり、20~50歳代にかけては、同様の数字で推移している。年齢階級間で男性ほど大きなばらつきは見受けられない。それでも、最もスコアが低いのはやはり50歳代で、男性より僅差で上回るスコアながら6つの年齢階級の中では最下位に甘んじている。

  では、「健全な食生活を常にこころがけているか」と言えば、これもいささか心もとない。図3.は男性のデータだが、6つの年齢階級のうち、50歳代は30歳代に次いで、下から2番目という結果となった。「常にこころがけている」と答えた人はわずか10.2%。60歳代の2分の1、70歳以上の3分の1という、残念な結果になっている。

 働き盛りの年代とは言え、意識的には30~40歳代と変わらない。肉体的には徐々に、加齢の影響が出てくる年代にもかかわらず、意識と行動は、若い時のままをひっぱっているような印象を受ける。

 この男性の為体に比べれば、女性ははるかに優等生である(図4.)。その傾向ははっきりしていて、年齢を重ねるほどに「常にこころがけている」人の割合は着実に増加している。50歳代同士で比べると、男性の10.2%とは比較にならない2727.5%が食生活に常に高い注意を払っている。

 食生活の意識レベルは、30歳代以上のどの年代を取っても女性の方が上回っているが、とくに男女間の乖離が甚だしいのが50歳代なのだ。

 健全な食習慣の妨げる要因は何だろうか? まずは男性(図5.)。20~50歳代でとくに突出しているのが、「時間がない」と「面倒くさい」だが、「時間がない」は、60歳代以上になると急激に少なくなる。「面倒くさい」も、年齢階級が上がるほど低下するが、時間要因ほどのドラスティックには落ち込まない。

 一方女性はどうか?(図6.)。傾向として男性とほぼ同様のグラフの波形を示しているが、「時間がない」、「面倒くさい」の2大要因では、概ね男性の比率を上回っている。未だに、家事や育児の多くが女性の負担になっている現実を反映したものだろう。

 年齢階級別に食生活の改善というテーマを見ると、30~40歳代の働き盛りと、シニア層という二つのグループに大別できることがわかった。50歳代はその両者の中間に位置し、その数字は言わば過渡期の産物とも見ることができる。しかしながら、加齢現象の影響を被り始める年頃にあって、食生活に問題を感じながらも、健全な食生活を心がけている人が少ないのは問題だ。過渡期にありながら、「健全な食生活を常にこころがけている」人が、全年齢階級中下から2番目での男性などもってのほかだ。

 50歳代から服薬率が急激に上がり始める、というデータもある(40歳代:8.1%→50歳代:26.5%/国民健康・栄養調査)。言うまでもなく、健康の土台は毎日の食事にある。高齢になればなるほど、健康か否かの二極化は進む。50歳代の過ごし方ひとつで、どんなシニアになるのかが決まってくると言っても、過言ではない。老いに向けての準備期をどう過ごすのか? 健康面での「勝ち組」になれるかどうかは、プレシニア期にかかっているのである。

   ㈱日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男