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食生活、シニアは日頃、何を気にしている?(上)

 シニア世代は、毎日の食生活で何を気にしているのか? そんな問いに答える調査が、「内閣府の高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査(令和3年・2021年)」だ。本稿では、その結果を詳細に見てゆくことで、シニアの食生活の課題を探ってみたい。

 図1は、食生活で気になる点の上位10項目(令和3年・「特にない」を除く)を平成26年のそれと比較したもの(全体計)。最も多かったのは「特にない」で、4割強がそう回答している。これはこれで喜ばしいことだが、それ以外では、「栄養のバランスが取れていない」ことが、具体的な気になることのトップを占めている。しかもそのスコア、令和3年では、平成26年を4%強上回っている。その結果、5人に1人が、4人に1人に変わったわけだから、その変化は著しい。

 それ以下の項目では、概ね、令和3年が平成26年を下回っている。中でも、「柔らかいもの以外食べられない」、「病気のため食事制限がある」といった、身体的、あるいは健康面での気がかりは順調に減ってきている。反面、「近くに食料品を売る店がない」、「家族との食事のペースが合わない」など、社会的な側面の気がかりは、7年間で微増の傾向にある。シニアの食生活の気がかりは、より社会的なことに向かっていると言えば、言い過ぎだろうか?

 以上のような気がかりな点は、年齢階級や男女別に違いがあるのだろうか? 図2は、「栄養のバランスが取れていない」ことが気がかりな人を細かくセグメントして見たものだ。

 年齢階級が上がるほど、「栄養のバランス」を気にする率が下がってくるのは、男女とも同様の傾向にある。但し、振れ幅は男性の方が大きい。女性で最も率が高いのが、60~64歳の30.8%。最も低いのが80歳以上の19.3%。振れ幅は11.5%に収まっている。60~64歳が最も高く、80歳以上が最も低いのは男性も変わらないが、振れ幅は19.4%と女性に比べてかなり大きい。

 また、男性と女性では、相似形を描きながらも、各年齢階級で男性の方が率が低くなっている。このデータはあくまで意識調査なので、あるいは女性の方が「栄養のバランス」に関してのセンサーが敏感であることを反映した結果なのかもしれない。

 「栄養のバランス」にかなり水を空けられながらも、気になる点の第2位につけたのが。「パック食品、缶、ビンなどが開けにくい」という点。気がかりにしている人は、圧倒的に女性が多い。指先の力仕事は、やはり女性にとって荷が重いことなのだろう。女性では、60~64歳では、わずかに6.0%に過ぎなかったものが、年齢階級が上がるにつれてその率は高まり(75~79歳を除く)、80歳以上では、23.3%と、ほぼ4人に1人が、気になる点として挙げている。一方の男性では、最も高率の80歳以上でさえ9.2%と、10人に1人に満たない数字になっている。

 図4は、「近くに食料品を売る店がない」ことが、気がかりな点。これも、女性でその率が高く、男性で低い結果となった。最も高かったのが80歳以上の女性で、16.1%。ついで、75~79歳女性の12.1%と高齢女性がワン・トゥーフィニシュを占めた。3位には、80歳以上男性が入り、この3つの性別年齢階級が、10%以上を記録している。男女とも、60歳代では、ほとんど気になる点には挙げられず、いわゆる「買い物難民」は、75歳以上の後期高齢者層の課題であることが、明らかになったようだ。

 図5は、「調理が十分にできない」ことが気になる率。設問からは、調理のスキルなのか、調理に対する気力、体力なのか定かではないが、いずれも包括されていると考えるのが妥当だろう。

 この悩みは、男性、女性ともほぼ同様のグラフ波形を示しており、性差はそれほど際立っては感じ取れない。もっとも、女性では、10%以上なのが、80歳以上のみに留まっているに対し、男性では、70~74歳、75~79歳、80歳以上と、3つの年齢階級にまたがって、10%を超えている。この世代の男性は、まだまだ調理は苦手のようである。(下に続く)

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男