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食生活、シニアは日頃、何を気にしている?(下)

 毎日の健康的な摂食に欠かせない要素が咀嚼。口の中で食べ物をよくかみ砕き、味わうことだ。「柔らかいもの以外食べられない」ことを気にしている人は、性別・年齢階級別に見れば、どのような傾向を示しているのだろう?(図6)

 顕著な結果が現れた。男女とも、80歳以上になれば、この悩みに直面する人が急激に増加しているのだ。とくに女性では高く、18.6%。5人に1人が気にしている。男性の11.5%と比べると、その差は7.1%にもなる。もっとも、それ以下の年齢階級においては、男性の方が、押しなべて数字が高くなっている。ことに70~74歳の年齢階級では、男性7.4%に比べて、女性はその半数にも満たない3.2%と小さな数字。同じ70歳代でも、後期高齢者に入る75~79歳では、男性6.9%、女性6.1%と際立った性差は認められない。

 因みに、歯の本数が20本を割り込み始めるのが、75~79歳の年齢階級で、男性18.5本、女性17.6本。85歳を超えれば、男性12本、女性9本と、心もとない状況になる(平成28年(2016年)厚生労働省「歯科疾患実態調査結果の概要」)。「柔らかいもの以外食べられない」理由は歯の本数だけではないだろうが、通底している部分は大きいだろう。

 

 図7は、「家族との食事の時間が合わない」ことを気にしている人の割合。「柔らかいもの以外食べられない」とは真逆で、男女とも、60~64歳という年齢階級で際立って高く、その他は6~7%台の小幅の範囲内で収まっている。また、平成26年との比較でも、ほとんど変化がなく、特徴をつかみきれないデータとなった。生活パターンが家族中心から個人中心に変わるメガトレンドの中にあって、一定の率を常に占めている課題と言えよう。

 「病気のために食事制限がある」という課題は、一筋縄ではいかない波形となった(図8)。計10種類のセグメントごとに数字にはバラツキがある。また、「年齢階級が上がるほどスコアは高くなるだろう」という常識的な推測にもあてはまらない。10%を超えるスコアは、80歳以上の女性と、60~64歳の男性の2つのセグメントのみ。食事制限と年齢階級は、必ずしも相関する関係ではないのだ。

 ただ、全体の数字で平成26年と比較すれば、8.6%から7.4%へとスコアが低くなっている。ゆるやかに健康を取り戻しつつある課題ではある。

 「体が衰えて買い物に行きづらい」(図9)と答えた人の率は、10のセグメントの中で、80歳以上の女性が、18.6%と、圧倒的に高い。2位の80歳以上の男性(10.1%)と比べてもダブルスコアに近い。男女とも74歳までは、低いスコアに留まっているが、後期高齢者に足を踏み入れるころから、そのスコアを伸ばし始めている。男女別では概ね、女性により大きい食環境課題である。

 「パック食品の量が多くむだが出る」(図10)ことが気になるという声は、80歳以上の女性から多く寄せられている。加齢による少食化ともったいない意識の双方から来ると思われる。男性では、年齢階級との相関」が明らかでないことから察すると、意識面の要因がより大きいのかもしれない。

 最後の気になるポイントは、「家族との食事のペースが合わない」こと(図11)。80歳以上の男性が7.8%と、10のセグメントの中で最も高いスコアを記録した。このポイントも、性別・年齢階級別に際立った相関関係は認められなかった。平成26年との比較では、0.6%と微増。社会的食環境に変化が見え隠れしている。

 以上,細かく見てきたが、身体的な衰えに起因する問題点は、後期高齢者に足を踏み入れたころから兆しはじめ、80歳以上で顕在化してくることが見えてきた。60歳代から食生活に気を配ることが大切であるという気づきが得られたようだ。そんな中、「食事制限」を気にする率が最も高いのが60~64歳男性であることは、若干気になるところだ。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男