コロナの影響で大きなダメージを受けたといわれるのが衣料。オンライン消費への打撃も同様だったのか。紳士用衣料から見てゆこう。(図7.)
意外なことに、逆風が吹く紳士用衣料にしてさえ、前年同月に比べ、オンライン支出は全年齢階級で伸びている。とくに実質支出で伸びが大きいのが30歳代。そしてこと伸び率だけに注目すると、これまた意外なことに80歳以上がなんと200%越えを記録している。全年齢階級を通じてダントツのトップだ。80歳以上だけでなく、60歳代では約144%、70歳代では約147%と、高い伸び率を達成している。ネットで服を買うことへの抵抗感が徐々に小さくなってきている証左とも言えよう。
テレワークを中心とした働き方が一般的になれば、装い方も変わる。紳士用衣料の中でも、スーツは回復の兆しが見られない。大手紳士服メーカーにおいても、前年同月比3~4割の減少が続いている。一方で、ステイ・ホームの追い風を受けて、リラックスできる部屋着に人気が集まっている。オンラインで買いやすいカジュアルウェアが伸びを支えている一面もあると思う。
2年前に遡って数字を見ると、60~70歳代では、コンスタントに伸びてきたことがわかる(図7´)。コロナ禍はその後押しをしたような形になった。80歳以上では、よりリスクの高い外出を手控える傾向が強かったと思われる。
紳士用より市場の大きな婦人用衣料でも、紳士用同様の傾向が見て取れる。(図8.)30~50歳代がネット支出を牽引し、全年齢階級で前年同月の支出額を上回っている。シニア層の支出は、若い人ほど旺盛ではないものの、70歳以上の伸び率は高い。ことに70歳代では、前年同月の200%以上となっている。
婦人用衣料をさらに1年遡って、シニア層の動きを見てみよう(図8´)。60歳代、70歳代、80歳以上の3つの年齢階級の中で、最もコロナの影響を受けているのが70歳代であることが明らかになった。
60歳代の伸びは、コロナ以前の伸び率の延長線上にあり、デジタルへのシフトがごく自然に進行していることがわかる。80歳代も、2020/2019(各5月)が2019/2018(各5月)を上回ってはいるものの、コロナ減少と言えるほどまでではない。ところが、70歳代では、2020/2019(各5月)が2019/2018(各5月)を大幅に上回っている。
「70歳以上女性キラキラ消費」とも言われ、消費のリーダーを務めていた世代がリアルという店舗に代わってネットにその消費意欲を向けたと言えそうである。
履物その他衣料でも、前年同月を全年齢階級で上回っている(図9.)。ここでいうその他の衣料とは、子供用衣類、帽子、ネクタイ、靴下などを指す。
面白いことに、昨年5月と本年5月のグラフの形は相似形であり、今年の方が一年齢階級分後ずれしていることだ。ネット支出が徐々に高齢へシフトしている典型的なパターンだ。ここでも、70歳代は気を吐いている。
当支出項目のコロナの影響はどうだろうか?(図9´) 突出した現象にはなっていないが、シニアの各年齢階級で、ここ1年の伸び率が大きくなっている。ことに80歳以上では、前年一旦半減したのち、2.5倍増と振れ幅が大きくなっている。やはり、リアルな来店が困難だったからだろうか? (④に続く)
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年11月26日
2024年10月30日
2024年9月25日