前年同月と様相を大きく異にしたのが、被服及び履物の費目である。(図5.)
驚くべきことに、各年齢階級とも概ね50%内外にまで、支出額を減少させている。減少額が最も大きいのが、50歳代の8,300円。次いで、40歳代の7,300円、60歳代の6,000円と続く。家計調査の数ある費目の中で、疫禍の影響を最も強く受けている。
減少率でみると、60歳代が最も甚だしく、前年同月の40.2%。次いで、20歳代の41.2%、50歳代の43.0%と続く。いずれも半減以下という惨状だ。ステイ・ホームの影響を真正面から受け止めた結果となった。
図6.は保健医療費。この費目には、医薬品、健康保持用摂取品、保健医療用品・器具、保健医療サービス等が含まれる。
2019、2020年共に、年齢階級が上がるほど、消費支出は増加する傾向にあるが、ことシニア層に関しては、60歳代が前年同月比84.3%と減少し、70歳以上は106.6%と増加に転じた。この対照的な結果が、統計上の偶々なのか、それとも明確な理由があってのことか、現段階では分からないが、5月実績も注意深く見てゆく必要があるだろう。
図7.は通信費。想像のとおり、若い年代からミドル世代まで、ほぼ前年同月を上回っている。60歳代以上は目立って少なくなるが、60歳代では減少に、70歳以上では増加にと、異なる傾向を示している。保健医療の費目と同様継続して追っていきたい傾向ではある。
図8.は教養娯楽の費目。ここには耐久財のほか、書籍等の印刷物、教養娯楽サービス、宿泊料金、パック旅行費、月謝など、幅広い品目が含まれる。
増減傾向では、すべての年齢階級で前年同月を下回っている。それも、29歳以下の若い世代を除けば、30~40%と、無視できない大きな減少幅を記録している。この減り幅は、被覆及び履物の費目に次ぐ。
ことに減少が著しいのが、60歳代で、約37%の落ち込み。70歳以上、50歳代の減り幅も非常に大きい。
費目別の傾向として最後に見ておきたいのが交際費。この費目も包含する領域は幅広い。食料、家具・家事用品、被覆・履物、教養娯楽、その他の物品サービス、贈与金と多岐にわたる。
従来、交際費と言えばシニアを代表する消費費目の一つであった。そのシニア層で、前年同月比の低下が著しい。60歳代では、前年の50.2%、70歳以上では前年の53.7%とそれぞれ半減に近い減少幅を記録している。因みに、29歳以下の若い世代も、前年の49%と半数に満たない。(③に続く)
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
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