シニア市場に特化した
調査・分析・企画・
コピーライティング・デザイン

株式会社日本SPセンターが運営する
シニアマーケティングに関する専門サイトです。

シニア消費を創り出すには ふとん用掃除機「レイコップ」  ―シニアマーケティング成功事例 (5)

最近、国内の家電メーカーがシニア層を想定した白物家電を次々に発表、発売している。日経の記事によると「小さく、軽く、ぜいたく」だそうだ。「小さく、軽く」は大いに結構。しかし、ただ「ぜいたく」にはちょっと注意が必要だ。

シニア向けに十分配慮して値段が高くなってしまった、というのではなく「高いからシニア向け」という本末転倒した商品(製品やサービス)も見受けられる。シニアはみんな「お金持ち」ではない。これは多くのデータがはっきりと示している。

よく「70歳代の資産は平均2300万円以上」とか、「シニアの年間消費額は100兆円」といったデータが一人歩きしているが、資産があっても「使えるお金」でなければ豊かに消費できない。全体の消費額は60歳以上の年齢人口が増えているので当然シニアの消費額は大きくなる。

シニアの資産の大部分は今、居住している自宅の土地、建物が占める

シニアの資産には今、居住している自宅の土地、建物もあるが処分は難しい

年金の減額が現実味を帯びる中、「ぜいたく」な商品がシニアに受け入れられるのだろうか。コストをかけた商品が広くシニアに受け入れられているのか検証が必要だ。

これまで長くの家電製品の新製品市場導入に携わってきたが、安易な高級路線の商品はいつの間にか市場から消えていることが多かった。

では安い商品しか受け入れてもらえないのか。そんなことはない。その価格に見合った「価値情報」がシニアに届いてれば、である。
一例として家電製品の掃除機の「ぜいたく」とはなにかを考えてみよう。シニアの夫婦、もしくは単身の住まいでどれだけ「掃除機で吸えるゴミ」がでるのだろうか。吸い込み力が足りないから困っているのだろうか。話題のロボット掃除機はシニアに受け入れられているのだろうか…「ぜいたく」の中身を検討する必要がある。一つのヒントがあるので紹介しよう。

今通販番組で布団を紫外線で除菌してアレルギーの原因となるダニを吸い取ると言われている「レイコップ」という韓国メーカーの掃除機が高齢者にも売れている。テレビ通販の「ジャパネットたかた」は昨年60万台を売ったそうだ。1台2万円以上で決して安くない。しかも布団専用である。この「ぜいたく」はなぜ受け入れられたのか。

布団掃除に特化した点がポイント。ただしそのポイントを〃シニアの自分ゴトにするかが大切。

布団掃除に特化した点がポイント。ただしそのポイントをどうシニアの自分ゴトにするかが大切

年をとると咳が出やすく、寝苦しいことがある。その時考えるのは、ひょっとして布団にダニがいるのではないか?気にはなっていても重い布団を干すのが辛くて日に当てることも少なくなった。そんなことを思っている時に「布団専用ダニクリーナー」と絞り込んだレイコップ提案は受け入れられやすいのは当然だろう。布団のクリーナーは赤ちゃん用、という考えが働くが、高齢者もアレルギーに対しての抵抗力は衰えている。この辺りはレイコップが昨年実施した「シニア・モニターキャンペーン」応募者の声をサイトで見ることができるので参考になるだろう。

http://www.raycop.jp/voice/#senior

「ぜいたく」や「ゆうゆう」ではなく、シニアの視点で「伝える力が消費を創る」(ジャパネットたかた社長 高田明氏 「日経MJヒット塾特別セミナー」講演より)からである。

「消費不況、デフレ、モノが売れない時代と言われますが、一方で高級品であってもしっかりと売れているモノがあります。商品にはデフレで価格 が下がるものと、高級でもそれだけの価値を充分に感じていただける高付加価値商品があります。 安く販売できるものはできるだけ安く、同時に付加価値を伝えるべき商品はしっかりと価値を伝え、納得していただける価格をご提示していく、 これがジャパネットの価格に対する考え方です」(〃ジャパネットたかたHPより)。

シニアに商品を買ってもらうためには、もちろん商品に工夫も必要だ。しかし、先の高田氏が言うように20~30代の働く女性向けの電動歯ブラシでも60歳以上にシニアのQOLにおける歯の健康の大切さをしっかり説明すれば大きな市場を創り出せる。

シニア市場に向けて出した商品が思うように売れない…なぜ売れないか。理由に一つとしてシニアの消費(購買)に役立つ商品情報が不足していないか、見なおしてみる必要がある。商品情報は量だけではない。質も問題だ。そもそも字が小さくて読めない、淡い色で見えない、これではシニアに情報は届かない。説明も技術用語やカタカナ言葉がいっぱいで商品が自分にどう役立つかわからない。シニア一人ひとりに取って商品情報とは自分にとっての価値情報だ。

シニア消費を創り出すためには、今一度、その商品の価値情報がちゃんとシニアに伝わるかどうかをシニアの視点で確認する必要がありそうだ。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 室長 倉内直也