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文化芸術体験、70歳以上は「鑑賞」より「活動」(下)

(中から続く)
「鑑賞」と同様に、個別ジャンルにおける「活動への参加」程度を見てゆこう。

図12.は、地域の芸能や祭りへの参加率。個別ジャンルの中では総じてスコアの高い活動だ。ここで圧倒的な存在感を放っているのが30歳代。他の年齢階級から頭一つ抜きんでていて、21.4%もの人がこの一年間に主体者として活動に加わっている。
次いで多いのが40歳代。そして第3位には70歳以上がランクインされている。指導的役割、長老としての差配が主な役どころであろう。意外なことに60歳代の参加率は思ったほど高くはない。

図13.は、習い事の受講。音楽、舞踊、茶道、華道、書道などが代表的だ。
このジャンルでは、大方のご想像通り、60歳以上のシニア世代のパワーが、他の年齢階級を圧倒している。最もスコアの高いのが70歳以上の11.3%、次いで60歳代の9.8%がそれに続く。多くの時間が必要な習い事には、可処分時間という縛りがあまりない年代がやはり向いているのだろう。

習い事と同様にシニア世代の存在感が大きいのが、創作活動。文学・音楽・美術・演劇・舞踊など様々な分野がここには含まれる。
このジャンルでは、他の年齢階級を押さえて70歳以上が堂々のトップで9.2%。10人のうち、約1人が創作活動に携わっているというから驚きだ。そして僅差で2位につけているのが20歳代こちらも9.0%と10人に約1人が携わっている。この2つの年齢階級の創作活動は双璧をなして旺盛だ。そしてここでも60歳代は6.6%と影が薄い。

最後に、最もアグレッシブな参加形態といえる「演奏・出演」経験を見てみよう。「創作」と同様、音楽・演劇・舞踊・映画といった、多様な活動を総和しての数字である。

他の「活動への参加」に比べていささかハードルが高いのか、参加母数は「創作」と比べて少ないが、年齢階級別の傾向を見ると、「創作」とほぼ同じ波形になっていることがわかる。即ち、20歳代と70歳以上の層が、演奏・出演という参加形態を引っ張っているのだ。

順位のトップこそ5.2%の20歳代に譲りこそすれ、70歳以上はそれ以外の層を押さえて第2位をキープ。両年齢階級で双璧を成しているという構図には変わりがない。そしてここでも60歳代はわずか3.0%と些か元気がない。

全ジャンル平均と個別ジャンルの実態の乖離。「鑑賞」で窺えたこの傾向は、よりポジティブな「主体的な参加」においては顕著ではなかった。全体の傾向が概ね個別の傾向の合わせ鏡になっている。総じていえば、20~30歳代の若年層と70歳以上の高齢者層が「参加」活動における主体であるということだ。
同時に、60歳代は両層に比べてやや不活性だということ。これは気がかりなポイントでもある。ワーキング・シニアの増加で時間的な制約の多い60歳代が増えたこともあるだろうが、それだけでは働き盛りの30~50歳代もその条件は変わらない。活動ジャンルによっては、60歳代が現役世代を下回っている理由にはならない。

あくまで推測の域を出ないが、時間もさることながら、「金銭的余裕」がないのがその理由の一つかもしれない。住宅ローン等の残債、退職金の減少、教育費の継続、雇用条件の変化など、60歳代の環境変化にその一因を求めてもあながち間違いとは言えないとは思う。

ともあれ70歳以上の高齢者が殊に「参加・活動」というポジティブな関わり方で、文化・芸術活動の一端を担っているのは喜ばしいことだ。人生100年時代を迎え、官民ともに参加できる「場づくり」の重要性は、高まる一方だ。

株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男