シニア市場に特化した
調査・分析・企画・
コピーライティング・デザイン

株式会社日本SPセンターが運営する
シニアマーケティングに関する専門サイトです。

高まる、高齢者の食育ニーズ

「食育」は幼少期・成長期に行われるもの、と思われる方が多いのではないだろうか。しかし昨今、大人や高齢者に対する食育の必要性が提唱されている。
政府・自治体が推進する高齢者の食育というと、要支援以上の方を対象にした栄養改善教室や、一般介護事業で実施している低栄養予防教室や会食サービスの利用が思いつく。
しかし高齢社会に対する施策として行政側が奮闘しているだけでなく、実は、高齢者からのニーズも高い。


男性・女性ともに、年齢があがるにしたがって「食育に関心がある」と答えている率が高まっている。昨今、マスコミなどでは高齢者の栄養失調の増加を課題として取り上げ、多くの方が知ることになった。(70-75歳の5人に一人が低栄養傾向(BMI20以下)にある(平成26年の『国民健康・栄養調査報告』厚生労働省)詳細は飽食の時代に、老人性栄養失調が課題を参照)
こうした背景もあって、高齢者自身が食生活に対する関心を高めているのだろう。

加齢に伴い生じる、心身の変化
多面的な変化を認識した食生活を支援する

「食育」とは、食を知り、食を考え、食を選ぶ力を身につけることである。(厚生労働省・農林水産省)
高齢者の食育においては身体に生じる変化を認識し、それらを踏まえて望ましい食生活を知り、考え、食を選ぶ必要がある。たとえば年齢を重ねると味覚が変化し味覚障害を起こす人が少なくなく、多くの人は腸からの栄養吸収力が低下する。こうした身体的変化を前提にした食生活を送ることが重要になる。
しかし関心がある人が多いとはいえ、高齢者が学び続け、工夫を続けていくには、支援が必要だろう。また昨今は「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も提言されるようになってきた。
年々、新しいエビデンスが発見され、医学・栄養学における常識はどんどん更新されている。
学ぶべき、理解すべき内容も更新され、高齢者にとって「食育」はますますハードルが高くなるだろう。
そしてこのように食育が難しくなることは、ひとつのビジネスチャンスになりうる。

高齢者は健康への意識が高く、食育への関心も強い。しかし食育は、理解するには少々面倒で、常に新しい情報が登場してくるため、取り組むことが難しい。
気になりながらもひとりで理解するには困難で、面倒くさいことをわかりやすく教えてもらえるなら、高齢者にとって大きな価値をもつだろう。また「食べる」ことは楽しくても、学んだり考えたりすることにも楽しさがなければ、なかなか取り組めないし、続かない。
「難しくて面倒くさい」ことを克服し、「楽しみながら学んだり考えたりする」、高齢者向け「食育」と商品・サービスを届けることができれば、ビジネスになるのではないか。

まじめに分かってほしいが
まじめに学ぶだけでは、集客・継続はむずかしい

高齢者が食生活に注意を向け、楽しく食事をしてもらうために、多くの地方自治体では低栄養予防教室や会食サービスを行っている。しかしこれらの対象は要支援以上の介護保険認定者がほとんど。できることなら要支援・要介護の課題が発生する前に予防策として、より多くの人に食育を行き渡らせたい。多くの高齢者は健康に対する意識が高く、先のグラフが示していたとおり食育への関心も高い。ニーズはある。
介護保険認定を受けていない方々、つまり当研究室で定義している、ケアシニア以外のシニアに向けた「食育商品」「食育サービス」の開発が急がれる。

楽しく美味しく健やかになる
食育&食事の提供アイディア

当研究室では、シマ研式切り口発見チャートを提案している。今回はこれを使って、食育と自社商品を提案する方法を考えてみたい。
下記は当研究室が提案しているアクティブ・シニアをターゲットにした10の切り口から、食育テーマにあうキーワードを選び、サービスを開発するために例としてつくったチャートである。
サービス提供者は旅行業者。食育をテーマに旅商品を検討するとどんな旅行を提案できるか、検討してみた。

このように切り口を組み合わせ、そこに自社商品を投入していくことで、新しい商品やサービスを考えることが可能になる。
こうした切り口発見チャートに必要な「シニアの価値観10の切り口」は、当研究室で提供しているホワイトペーパーに詳細を紹介しているので、ご覧いただきたい。

■ホワイトペーパーダウンロードサービス
○アクティブ・シニアに向けた切り口
○ディフェンシブ・シニアに向けた切り口
○ギャップ・シニアに向けた切り口
○ケア・シニアに向けた切り口

新しい情報を取り入れ、継続して提案する
食育ビジネスが求められる

必要な食事は年齢を重ねるに従い変化する。新しいエビデンスがでてくると、情報そのものが更新される。つまり食育は一度学んだらおしまいではなく、生きている限り、健康を維持するために学び、実践し続けることが望ましい。
情報の更新には、商品やサービスの提供者と利用者の関係性を続けることが重要。ビジネスとしても、高齢者が健康を維持するためにも、一度、食育を通してできた関係をその後も活用し、年齢に応じた学びや提案が必要である。疾病等がおきればその状況に応じた、食育サービスや食育商品、さらに食事そのものの開発、提供が望まれる。
健康なシニアにこそ食育を提案し、継続的に健やかな加齢を支援していくことが必要なビジネスになっていくのではないだろうか。

株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子