(②から続く)
次の設問は「買う前に機能・品質・価格等を充分に調べる」か否かという、購買に関しての情報収集の慎重度を問うたもの。(図5.)
情報収集慎重派は年齢層と逆相関の関係にあり、面白いことに年齢層が上がるほど、「充分に調べる」人は減少してゆく。未成年を除くと、「充分に調べる」派は、20歳代で最も多く、64.9%というハイスコアとなった。逆に最も低いのは、80代以上の48.5%。
男女別を加味すれば、「充分に調べる」派の最高値は、30代男性の68.5%。最低値は、80代以上女性の45.8%である。
50代と65歳以上の高齢者層を単純に比較すると、7.2ポイントと比較的目につく差が付いた。前項の設問、「多少高くても品質の良い物を選ぶ」では、ロースコアだった50代だが、購買に関しての下調べはマメなのである。おそらく「価格」も品質の一つとして重きを置いているのだろう。
高齢になるほど、「充分には調べない」は、事実だが、決してさぼったり、軽視しているわけではない。というのも、「実際に現物を見て商品を確認してから購入する」人は、高齢者が50代、全年齢層平均を上回っているからだ。(図6.)高齢者は実は究極的に慎重な購買態度を有する層なのだ。
高齢者の情報収集が不熱心(?)なのは、むしろ、加齢による衰えに起因する根気のなさや、集中力の低下によるものだと思われる。
この「実際に現物を見て商品を確認してから購入する」という傾向は、全年齢層を通じて、60%以上と高率だ。その中にあって、60代は71.6%、65歳以上という括りでは71.5%と、ともに70%を超えるハイスコアであることは特筆される。男女別・年齢別に細分化したグループで、最もハイスコアだったのが、70代男性。「現物確認」派は75.8%にも上っている。
シニアマーケティングを語る上で、「実際に(どう便利かなどを)見せる」ことの重要性は、よく取沙汰されることだが、図らずもこの数値で裏づけられた感がある。
意外な結果だったのが、「同じ商品・ブランドを購入することが多い」かどうかを問う設問。(図7.)
「当てはまる」と答えた【保守派】は、50代で43.1%。それに対して高齢者層では28.5%と、30%を割り込む低率だった。その差は15ポイント近くに及ぶ。
一般的に「ブランドの固定化は50代で決まり、その後は動くことが少ない」というのが常識だろう。事実、グループインタビューなどの肉声を通じて、我々もしばしば耳にしたことだ。
さらに年代別に見て行くと、若年層ほど、同じブランド、同じ商品を選考するという結果が明らかになった。20代で「同じ商品・ブランドを購入することが多い」と答えた人は、48.1%に上るのに対し、70代では26.4%と20ポイント以上の乖離が存在する。「ブランド」という言葉の定義や解釈に多少のズレがあることを割り引いても、個人的には意外な事実であった。
ブランドからの自由度が最も高いのは、男女とも70代(男性:25.7%、女性:27.1%)。この事実はマーケティング的に注目されてよいと思う。(④に続く)
図8.は、「店舗や事業者の固定度」。ブランドや商品選考には、年代別に大きな差が認められたが、「当てはまる」と答えた人は、押しなべて60%台。これほど年代別に差異のないデータも珍しい。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年10月30日
2024年9月25日
2024年8月21日