働くシニアが増えていることは、以前のアーティクルでもご紹介した。
数字的に軽くおさらいすると、2014/2005年比における65歳以上就業者の伸びは、正規雇用者で1.65倍、非正規雇用者で2.17倍。労働力人口に占める高齢者の割合も、同じく2014/2005比で3%の上昇を記録した。(数字はいずれも2014年 労働力調査より)
昨年末の「ミニ経済白書」でも、シニアの労働に触れられており、「高齢者が職に就き安定した収入を得ることができれば、消費支出もより積極的になる可能性が高い。これは、経済全体の消費に対してもプラスの効果を持ちうると考えられる。」とシニアの労働を経済的な面からも奨励している。
就労高齢者の増加は、現在の所、マクロ的には望ましい方向に向かっているとは言えるが、その内実はどうだろう。
今回のアーティクルでは、被雇用側の望む労働形態やその満足度とともに、雇用する側の考え方や態度について、3回にわたって概観してゆくことにする。
図1.は、今後希望する雇用形態を年代別に見たもの。「転職」というフィルタはかかっているものの、概ね「希望職種」と考えて間違いない。
このデータに拠れば、60歳未満の63%が正社員を希望しているのに反し、60歳以上では、パート、アルバイト、嘱託、契約社員など非正規雇用を望む向きが主流派を占めている。
同じく、2014年労働力調査の別のデータを掛け合わせてみると興味深い事実が浮かび上がってくる。
2014年現在、65歳以上の正規雇用者は約86万人、非正規雇用者は234万人。ざっと2.7倍の開きがある。
ところが、「今後の転職で希望する雇用形態」(図1.)では、65歳~69歳のグループで、正社員7.8%。開きは約8.2倍にグンと拡大する。
些か乱暴な解釈だが、現状正規雇用で働いている方も、潜在的には、非正規の働き方を理想としているとは言えないだろうか?
では、転職後の満足度はどうなのだろうか?
図2.は、直近の転職年齢(年代幅)ごとの転職結果への満足度を問うたもの。
「とても満足している」「多少は満足している」の合算数値が最も高いのが、44歳以下の年代。転職における条件闘争に比較的恵まれている若~中年世代の満足度が高いのは、肌感覚として首肯できる。意外なのは中高年よりも、シニア世代の満足度が高いこと。4世代区分の中で、第2位に付けているのである。
このような趨勢を反映してか、流通業を中心にシニアを積極的に雇用する企業も増えてきた。
ファミリーマートでは、FC加盟店のオーナーになれる条件を緩和した。以前は、原則65歳だった上限を、契約方式を見直すことで、70歳まで引き上げた。これにより、70歳から新たに契約し、75歳まで働くことも可能になる。
食品スーパー最大手のライフコーポレーションでは、優秀で健康なパートを対象に、70歳を越えても継続雇用できるようにした。
マルエツでは、2015年から、70歳以上のパートの活用をスタートさせている。こちらは言った雇用契約を終え、傘下の人材派遣会社に登録してもらう仕組みだ。
このようにWIN・WINの関係に見える、労使関係ではあるが、雇用側の見解はどうなのだろうか? 次回のアーティクルでは、「企業調査」から、雇用側の考え方や態度を紹介してゆきたい。(中に続く)
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年2月8日
2023年8月10日
2023年6月12日