シニア市場に特化した
調査・分析・企画・
コピーライティング・デザイン

株式会社日本SPセンターが運営する
シニアマーケティングに関する専門サイトです。

定年退職経験者が支えるNPOボランティア(下)

(承前)
前回のコラムでは、定年退職とNPO活動との関わりを主に数字で見てきたが、下では、その他の職業との関わりや、NPO活動を始めた動機やその達成感など、少し内面まで踏み込んだデータをご紹介したい。

図6

図6.はNPO法人以外での現在の職業を聞いたデータ。

定年退職後NPO法人一筋というイメージがあるが、60代以上では「NPO専業」は半数に満たず、他の職業にも従事している人が意外にも比較的多く見受けられた。

数ある兼職の中でも、60代では僅差ながら、そして70代ではやや差をあけて「経営者・自営業・個人事業主」の方が多い。
やはり時間的融通がききやすいと言うことも与っているだろう。

「企業や官庁の正規、非正規の社員や職員及び経営者や自営、個人事業主兼務」を合算した数字は、60代で約4割に近い、39.4%に上る。70代以上になっても、合算数字は35.8%に上る。
このグラフからは、とても「老」とは言えないエネルギッシュなシニアの姿が見えてくる。

図7

もう一つ驚きのデータがある。現在活動中のNPO法人に加え、別の社会貢献活動に参加している人が相当数いらっしゃるのだ。(図7.)

現在のNPO法人活動に専念している人の割合は年齢階層が上がるほど、目覚ましく低下してゆく。
それに反比例して、その他の社会貢献活動に参加している人の割合は、同じく年齢階層が上がるにつれて上昇している。

その中でも地縁的な活動に参加している人は、60代を境目に急上昇している。
とくに70代以上では、NPO活動と地縁的な活動の双方を充足させている人はNPO活動者の37.7%に上り、全年齢階層の中でトップを走っている。

また、地縁的な活動に比べてその伸びは緩やかではあるが、行政・学校教育・医療福祉機関での社会貢献活動を兼務している人の割合も、全年齢階層中70代以上がトップを走っている。

図8

図8.はそもそもの活動動機を年齢階層別に尋ねたもの。
NPO活動に参加する時点で、そもそも「人の役に立ち、社会や地域に貢献したい」という動機は強くて当然とは言えるものの、全年齢階層の中で、60代以上の数値が最も高くなっている。「理念や活動目的に共感した」という項目も全年齢階層で一番強い。
反対に、「新しい知識や技術・経験を得るため」「収入を得るため」などは、他の年齢階層に比べてかなり低い数字になっている。マズローの欲求五段階説におけるまさに、「自己実現の欲求」が、活動に参加するトリガーになっているのだ。

そして、動機は活動を行うことにより、概ね充足できている。

図9

NPO活動を通じて得られたものを問う設問(図9.)に関しては、60代以上では、「将来のキャリアに有利な経験を得られている」や「新しい知識や技術・経験が身についている」といった、未来志向の投資的成果こそ、他の年齢階層に大きく水をあけられているが、「社会・地域への貢献」「自分の意見が組織運営に反映されていること」「自分の経験や能力が活かされていること」への満足度は、他の年齢階層を上回っている。
自身が得てきたことを社会に還元することが、シニア層の活動のモチベーションになっていることが窺える。

NPO活動に従事するシニア層が即ちシニアの代表とは言えないだろうが、ある一定のボリュームのある典型の一つではある。高頻度で「外に出て活動する」シニア層を支える市場は、今後さらに成長すると予測される。

と同時に、その多くを無償ボランティアの善意に甘えているだけでは、早晩限界が来る。労働条件等法令の垣根はあるが、有償ボランティアの有償部分をもっと手厚くするなど、わずかでも労働を対価に変えることができれば、他の分野の消費ももっと活性化するのではないかと思う。

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男