先日(2016年5月10日)、情報管理ソリューションを提供している「トッパン・フォームズ株式会社」(以下、トッパンフォームズ)が興味深い実験結果を発表した。
それによると
「年配層は『縦書きの文字情報の方が高い関心を持つ』傾向があり、対して若年・中年層は「縦書きの文字情報を注視せず、関心に結びつかない」傾向があることが確認」できたそうだ。
◆以下、内容、画像ともトッパン・フォームズ株式会社のニュースリリースより
http://www.toppan-f.co.jp/news/2016/0510.html
実験は、45 歳以上の「年配層(男女7 名:45 歳~67歳)」と44 歳以下の「若年・中年層」(男女5 名:22 歳~44 歳)」とに分けて縦書きの文字情報を記載したグラフィックデザインを見たときの被験者の脳機能と視線を計測するというもの。
※44歳を分岐点にした理由は、「一般的に45 歳が視力の衰えを自覚するといわれているため」とのこと。
その結果、年配層と若年・中年層とでは、縦書きの文字情報の知覚について異なる傾向があることが判明した。
年配層は縦書きの文字情報を読んでいるとき、情報に関心が向けられている状態となり、前頭葉(とくに前頭前野下縁寄り)の活動が活性化し(図1)、併せてどの部分に視線が向けられたかを計測したところ、主に文字情報を注視していることが結果として得られたそうだ(図2)。
一方、若年・中年層は縦書きの文字情報に対して、年配層のような前頭葉の高い活動も見られない=関心が低い(図3)。
加えて、文字情報もあまり注視していないため(図4)、いわば「読み飛ばしている」状態が確認できたとのこと。
プレスリリースでは実験の結果から、年配層には縦書きの文字情報が読みやすく、関心も引き出しやすいとされている。
若年・中年層の実験結果は縦書きに対する関心の低さというより「文字情報」に対する関心の低さが影響しているのではないかと考えている(そのほうが問題として大きいのだが)。
弊室でもこれまでより、シニアへの情報発信について縦書きの効用を訴えてきた。
紙媒体では問題ない縦書きもWEB電子機器での表示となると技術的なハードルが高かった。そうした中で国も平成22年に総務省が「電子出版環境整備事業(新ICT利活用サービス創出支援事業)」の一環としてWEBや電子書籍の「縦書き」サポートを行っている。
とはいえその後、縦書きのサイトが多く見られるかというとそうではない。電子書籍のサービス中止も相次いでいると聞く。
「日本語は縦書きが読みやすい」とは実感としてあるのだが、それを実証するのはなかなか難しかった。この実験はそれを実証するものの一つとして注目したい。
※トッパン・フォームズ株式会社さまにはリリースの内容掲載の許可をいただきましたことに感謝いたします。
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也
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