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ことに女性は3年間で激増! シニアの社会参加(上)

 シニアマーケティングに関連するデータの中には、めまぐるしく変化するものとそうでないものがある。加齢による心身の変化や健康面はドラスティックに変わることが少ないが、コミュニケーションやメディア、デジタルとの親和性など、環境変化に関わるデータは、結構大きな変動を生む。社会参加もその一つ。

 内閣府では、2016年(平成28年)に「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(※1)を公表。3年後の2019年(令和元年)には「高齢者の経済生活に関する調査」(※2.)を公表している。調査の名称や結果のアウトプットの仕方は若干異なるが、社会参加に関する共通の設問も数多く、母数や調査対象もほぼ等しい。そこで比較可能な設問をピックアップし、3年間変化を浮き彫りにしてみた。本稿では、そこで明らかになった、「高まった能動性」、「社会参加意識の二極化」を軸に、浮かび上がったファクトをご紹介したい。

※1.2016年(平成28年)「高齢者の経済・生活環境に関する調査」 ● 調査地域:全国(但し、2016 年 4 月に発生した熊本県熊本地方を震源とする地震」の影響を鑑み、大分県と熊本県の調査は中止 ●調査対象:全国の 60 歳以上(平成 28 年 1 月 1 日現在)の男女個人(施設入所者は除く) ●有効回答数:1,976人

※2.2019年(令和元年)「高齢者の経済生活に関する調査」 ●調査地域:全国 ●」調査対象:全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女(施設入所者は除く) ●有効回答数:1,755人

図1.は、「何らかの社会活動を行っている」比率を、全体、男女、性別・年齢階級別の4つのセグメントについて、それぞれ比較したものだ。全体では、2016年比、6.6%という高い伸び率を記録した。わずか3年の経過でこの伸びは驚きでもある。男女別にブレイクダウンしてみるとさらに驚くことがある。男性の伸びは1.1%とほんのわずかなのに対して、女性では11.3%を記録している。全体の伸びを専ら女性が支えていることが、明白になった。

 両調査を加工せず、直接比較できる60~64歳男女と、75歳以上男女の4つのセグメントで比較してみると、75歳以上女性の伸び率が12.0%と最も高くなっている。社会活動への参加は75歳以上女性に支えられていると言っても過言ではないだろう。

 では、どんな活動に参加しているのだろうか? 代表的な2つの社会的活動について見てゆこう。図2.は、「自治会、町内会などの自治組織の活動」への参加率を比較した数字だ。全体では2.9%の伸びに過ぎないが、男女別に見ると、男性は2019年実績が、2016年を0.9%下回る結果となった。対して女性では、5.9%と女性の伸びが際立っている。

 さらに、60~64歳男女と、75歳以上男女の4つのセグメントで比較してみると、75歳以上のセグメントで、男女間の差がより際立ってくる。75歳以上男性では、2016年比で4.0%落ち込んでいる。一方女性では、7.5%も上昇している。この結果、75歳以上という範疇では、女性の参加率が男性のそれを上回るという結果になった。

  今一つの代表的な社会的活動、「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」への参加率は、どのように変化したのだろうか(図3.)? この種の社会的活動においても、やはり女性の伸長が際立っている。男性が、3.7%の伸びにとどまったのに比して、女性では、8.5%という大きな伸びを記録した。性別・年齢階級別の4つのセグメントに目を向けると、どのセグメントも2016比で伸びを記録しているが、注目すべきは60~64歳女性。2016年には7%そこそこだった参加率が、2019年には17.6%と、高い数字を示している。その伸び率は10.4%に及んでいる。75歳以上女性も負けてはいない。2016年には8.2%だったのが、2019年には15.9%。シニア層の社会的活動の隆盛は、まさに女性が支えているのである。

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男