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「歩く」市場をもっと活性化させよう!

厚生労働省が「健康日本21」で目標として取り上げた、
1日の歩数の目安は、8,000~10,000歩。
体重60㎏の人が時速4㎞、歩幅70cmで10分(約700m・1,000歩)
歩いて消費されるエネルギーが30㎉、10,000歩では300㎉になる。
海外の文献に拠れば、この数字が推奨される身体活動の目安に
なるらしい。

では、実際のところ、日本人は毎日どの程度の歩数を消化して
いるのだろうか。
図1.は全体と年齢層別、性別の歩数をグラフ化したもの。
全体の平均は、男性7,099歩、女性6,249歩と厚生労働省の
掲げる目標値を大きく割り込むお寒い数字になっている。

スライド1

年齢別に見れば、男性は30代でピークを迎え、その後、
年齢が上るにしたがって、徐々に歩数も少なくなっていく。
50代までは全年代の平均を上回るものの、60代で
平均値をわずかに割り込み、70代では平均値の75%まで
1日あたりの歩数は低下してくる。

一方、女性は男性とは異なる様相を見せている。
各年代の中で最も歩数が多いのは50代。
60代でも全年代平均を上回っており、ゆるやかなピークを
形成している。
反面70代に差し掛かってからの女性の落ち込みは激しい。
70代では、全年代平均の70%まで激減している。

歩数と肥満のデータを照らし合わせてみれば
面白い傾向に気がつく。

図2.は年代別男女別の肥満者の割合をグラフ化したもの。
歩数以外の諸要素の影響を受けることが多い、働き盛りに
肥満が多い男性に比べて、女性は歩数と肥満にゆるやかな
逆相関関係が認められる。

ことに70代は女性の肥満者が最も比率的に高い年代
となっていて、歩数の落ち込みと好対照を示している。

スライド2

客観的なデータは自覚としても認識されているようで、
「体力についての自信の有無」を問うたデータでも、
70代になれば、自信のある人はガクンと減ってくる。
(図3.)

スライド3

そのせいもあってか、「性別年代別の運動習慣者の割合」は、
60代、70代以上が他の年代を大きく上回ってくる。
(図4.)
その結果に呼応して「運動不足を感じるか」という設問では、
60~70以上で「運動不足を感じる」人は少なくなっている。
(図5.)

スライド4

スライド5

「運動習慣」の中身については不明だが、
歩数が伸びないことを考慮に入れれば、
体操など移動を伴わない軽運動が主流ではないかと推察される。

それでも「歩く」ことへの希求は50歳以上でとくに強く、
その年代層の「今後やってきたい運動・スポーツ」では、
ウォーキングが圧倒的に他の人気スポーツを引き離している。
(図6.)

スライド6

市場規模の観点で見れば、ウォーキング市場は小さい。
些か古い(2008年度版 レジャー白書)データで恐縮だが、
ウォーキングの市場規模は1,120億円。
4,250億円のフィットネスクラブの市場の4分の1に過ぎない。
8年後の現在、開きは大きくなりこそすれ、
その差は縮まっていないだろう。

平成24年の「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」
では、次のように謳われている。(抄述)

「歩数は身体の移動を伴うような比較的活発な身体運動の客観的
指標である。歩数の増加は健康寿命を延伸し、NCD(非感染性疾患)
を予防し、社会生活機能の維持・増進の上で直接的かつ効果的方策で
あるため指標として有用である。」

以上のようにウォーキング市場は潜在能力が非常に高い。
単に物販だけでなく、移動や飲食も含めた、
市場形成への取組みはもっと盛んになってよいと思う。

↓参考記事はこちら「シニアの足元」
https://www.nspc.jp/senior/archives/507/

日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男