高級炊飯器が売れている。しかも売れ筋価格帯も
より高価格帯へシフトしているという。
成熟商品にありがちな、周辺価値での勝負ではなく、
「おいしくごはんが炊ける」という極めて本来的な価値で
企業間競争を繰り広げていることは、
すでにあまたのマーケティングメディアやサイトで
取り上げられている通りである。
総合すると、売れている客先は、
① 少量をおいしく食べたいと言う、「空の巣」(※)夫妻
② 内食化に伴う、おウチでプチ贅沢層
の2つのグループに大別されるらしい。
(※子どもが独立して家を出た夫婦のみの世帯)
それはともかく、ごはんは和食回帰の先鋒をになっているのか?
パン食との関係はどうなのか?
シニアの食生活事情の垣間みることにしてみよう。
まずは、年齢層別にみた「ごはんの摂取頻度」。
大方の想像通りのように、日本人は本当にごはんが好きだ。
20代の若者でも、毎日2回以上ごはんを食べている人が6割に上る。
年齢が上になるにつれて、ごはん偏愛傾向が強まるのも、
常識的に肯えるところ。70代では8割近くが、毎日2回以上ごはんを
召し上がっている。(図1.)
パンと比較すればどうだろう。
図2.は毎日1回以上食べる人の割合を、ごはんと比較したデータである。
さすがにごはんの圧倒的優位はゆるぎはしないが、
興味深いことに、70代になってやや落ちるものの60代に至るまで、
パンの摂取は伸びつづけているのだ。
全年代の中で、なんと60代がパンの摂取率のピークを迎えている。
これは少し意外な事実である。
もう少し、詳しく見ていこう。図3.は朝食にごはんを食べる人、
パンを食べる人の割合を年齢層別にプロットしたものである。
全体的な傾向として、以下の2点が挙げられる。
1. 若い世代はパン食優勢だが、年齢が上がるとともに、パン派と
ごはん派は拮抗してゆく
2. 各年齢層を通じて、女性の方が男性よりもパンを好む傾向が強
い。ことに20~40代にかけて、男性との開きが大きい
興味深いデータが50代。男性のごはん派はこの年代で、ピーク
を迎えるのに比べ、女性のごはん派は、この年代が全年齢層の底を
打つ結果になっている。この差はどこから生じるのだろうか?
主食がごはんかパンかで、副菜のバリエーションに差があるか
どうかを調べたユニークなデータが図4.。
いずれも肌感覚として肯える結果ではあるものの、
グラフにすれば改めてごはんの持つ副菜バリエーションの豊かさがわかる。
逆に言えば、ごはん主食派は手間ヒマかけて、
副菜を準備しているとも想像できる。
各年代ごとの忙しさと、パン食ごはん食は案外相関関係によって
結ばれているのかもしれない。
比較的時間にゆとりのあるシニア層は、
「食生活で健康にきづかいながら」ごはんを主食にした
食生活を営む傾向があると言える。
図5.を見れば、「規則正しく食べる」ことと、「特定の食品群
の積極的な摂取」、それに「バランスよく多種多様な食品の摂取」が
上位に挙がってきている。これが何よりの証左である。
といってもパン食の簡便性や嚥下性の魅力も捨てがたい。
消費支出額の面から見れば、65歳以上にしても、
パンへの支出額が米へのそれを上回っている。(図6・)
高齢になるほど、和食回帰の傾向は明らかだが、かといって
パン食が見捨てられるわけでもない。要は、バランスの問題であり、
両者が相まって、高齢者の健康な食生活に資すれば、
誠に結構なことだと言える。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2023年9月5日
2023年6月28日
2022年8月26日