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『重高齢社会』の到来

 我が国の高齢化が言われて久しい。令和2年10月1日の時点で、65歳以上人口は3,619万人、総人口に占める割合(高齢化率)は28.8%(男女合わせて)となった。高齢者を男女別にみると男性は1,574万人で高齢化率は25.7%、女性は2,045万人で31.7%。つまり男性は4人に1人、女性は3人に1人が高齢者である。

 マスコミの報道などで、毎年、敬老の日に「高齢率」が大きく取り上げられて、一般には「日本は高齢化社会なんだなあ」という印象で終わってしまっている。

 正確に言うと日本は「高齢化社会」ではない。一般に、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」と呼ぶ。

※「高齢化社会」という用語は、1956(昭和31)年の国連の報告書において、当時の欧米先進国の水準を基にしつつ、仮に、7%以上を「高齢化した(aged)」人口と呼んでいたことに由来するのではないかとされているが、必ずしも定かではない。

 さらに21%を超えた社会は「超高齢社会」と呼ぶ。まさに今の日本は「超高齢社会」である。しかし、日本の実情はこの「超高齢者社会」という言葉では表すことができない重大な変化が進んでいる。それは高齢者の構造変化である。

 毎年公表される、「高齢社会白書」の冒頭には「高齢化の現状」として、高齢者の数や性比、生産者人口、子どもの数などの表が掲げられている。以下は最新の令和3年版高齢社会白書のものである。 

■高齢化の現状

 注目すべきは、65歳以上人口のうち、「65~74歳人口」は1,747万人(男性835万人、女性912万人)で総人口に占める割合は13.9%、「75歳以上人口」は1,872万人(男性739万人、女性1,134万人)で、総人口に占める割合は14.9%であり、65~74歳人口を上回っている。社会保障制度上でいわれる「前期高齢者」数を「後期高齢者」数が上回ったのである。

 この高齢者層の中でもさらに高齢の者の比率が高まるという、高齢者層の質的変化をとらえて、そのような社会を『重高齢社会』と呼ぶことを提案したい。すでに日本経済新聞が、2018年3月17日の記事で前期高齢者の数を後期高齢者の数が上回ることを予想。そのような社会を「重老齢社会」と呼び、記事の中で「重老齢社会」の以下のような問題点を上げている。

・消費をけん引してきたアクティブシニアの減少
・要介護認定者と「老々介護」の増加
・首都圏での後期高齢者の急ピッチの増加による介護問題の深刻化
・認知症の高齢者の増加による金融面でのトラブル
(日本経済新聞 2018年3月17日「『重老齢社会』が到来 日本、75歳以上が過半に」より)

 重高齢社会では高齢者の中で、より高齢のものが増加するため、死亡率が増加する。下のグラフは、同じく令和2年の「高齢社会白書」のあげられている、出生数及び死亡者数の将来推計である。その差から人口の減少が語られているが、ここではこの表の死亡率に注目する。
2020年に10%を超え、2045年には15.5%、2065年には17.7%に達する。

資料:2006年、2010年、2019年は厚生労働省「人口動態統計」による出生数及び死亡数(いずれも日本人)。2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果(日本における外国人を含む)

 死亡率はその年人口1000人に対して何人が死亡するかで算出される。つまり、死が近づいた終末期の高齢者が増えるということでもある。それは先の日経新聞の記事にあげられているような問題が顕在化
するということに他ならない。医療費が一番かかるのは、年齢に関わらず死ぬ直前に受ける急性期治療であるといわれている。死亡前の医療費は少子化のなかで社会保障費の増大にどう対処するのかも大きな社会問題となる。

 当室が掲げているの高齢者4類型でいえば、アクティブシニア、ディフェンシブシニアの期間をいかに延ばし、ギャップシニア、ケアシニアの期間を以下に短くするかということになる。

高齢者はそれぞれの期間が違っていても、上記の4類型を経てゆく

 そうするために高齢者のフレイル予防、認知症予防などに役立つさまざまなサービスや製品も現れてきている。ITやAIといったデジタルやロボットなどの技術の進歩だけでなく、高齢者に寄り添うサービスの開発やマーケティングによって、日本の将来、高齢者の将来が夢のあるものになることを期待したい。

       株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也