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定年だけではない。シニアの離職・入職・転職事情(中)

 本稿では、「前職を辞した理由」を個別にみてゆくことにする。各設問に関わることだが、前稿でも述べたように、60~64歳、65歳以上では、「定年・契約期間の満了」を辞職理由とする率は60%を超える(60~64歳:60.9%、65歳以上:65.5%)。制度設計上、ごく当然の回答率の高さなので、図表からは省いている。逆に、このような決定的要因の影響の少ない、他の年齢階級と比べることにより、シニアの転職要因が炙りだされるのではないかと考えている。

 図4.は、「仕事の内容に興味が持てなかった」ことで、前職を辞した人の割合。「能力・個性・資格を生かせなかった」という理由同様、生存欲求より高次な成長欲求に属する理由だ。

 この理由で前職を辞した人は、65歳以上を除き、女性が男性を上回っている。ことに、50~54歳女性は、8.0%と、他の性、年齢階級を大きく凌駕している。プレシニアと言ってよいこの世代は、1964~1969年生まれ。最も年かさの1964年生まれだと、」四年制大学卒業時に、男女雇用機会均等法施行を迎えている。そんな世代的意識もある程度作用しているのかもしれない。

 図5.は、「能力・個性・資格を生かせなかった」ことで、前職を辞した人の割合。図4.同様、成長欲求に属する設問だが、回答結果は明らかに異なっていて、男性が女性をほとんどの年齢階級で上回っている。唯一の例外は60~64歳。パーセンテージで見ると低位の比較だが、女性は男性の5倍近くに達している。

 何につけ世代論で語ることは良いとは言えないが、やはりここには男女雇用機会均等法前後の意識や行動の違いがわずかに反映されていると思う。

 「職場の人間関係が好ましくなかった」ことを辞職理由に挙げているのは、すべての年齢階級において、女性が男性を上回っていた(図6.)。最もその率が高いのが、50~54歳の18.5%。次いで、60~64歳の15.9%と続く。さすがに、65歳以上もなると、8.4%と、同性の全年齢階級中、最も低い数字になっているが、それでも、同年代の男性に比べれば、ダブルスコアになっている。男性では、最も高いのが40~44歳の12.1%、次いで、55~59歳の11.8%と続く。60歳以上の男性においては、60~64歳が6.4%、65歳以上が4.0%と、職場の人間関係に悩むケースは少なくなっている。

 「会社の将来が不安だった」ことを辞職理由に挙げる人は、男性と女性で数字に大きな開きがあり、概ね、男性が女性を大きく上回っている。男性の会社依存度の高さが窺える。とくに、子育て真っ只中の40~44歳代で、男女全年齢階級中トップを記録した。

 概ね、年齢階級が上がるほど、その率は低くなる傾向にある。その中で、60~64歳女性のみが、同世代男性を上回っている。さらには、同性の55~59歳をもう上回っている。統計上のマジックに過ぎないかもしれないが、気になる傾向ではある。(次回に続く)

   株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男