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定年だけではない。シニアの離職・入職・転職事情(上)

 ひと昔前なら、とくに男性の場合、「仕事→定年→余生」という風に、人生設計はワンパターンと言えた。現在でも、60歳以上男性転職入職者の前職辞職理由は、定年や契約期間の満了によるもので、その数字は60%を超えている。しかしながら、それ以外の理由も4割相当存在するわけで、人生設計の在り方は多様化してきている。

 本稿では、「定年や契約期間の満了」以外の転職理由を明らかにすることで、シニアの労働観を垣間見ることにしたい。データはすべて、令和元年(2019年)雇用動向調査を典拠としている。

 各論に入る前に、入職率・離職率の実態を年齢階級別に概観しておこう。   図1.は、男性の場合だが、30歳以上の7つの年齢階級の中で、入職率が最も高いのが、60~64歳の14.5%。次いで65歳以上の12.6%となっている。一方離職率では65歳以上が23.5%と最も高く、次いで60~64歳の19.0%となっている。

 いずれにしても、60歳以上の雇用の流動性が非常に高くなっているのは驚きだ。65歳以上の高齢者層でも、離職者数の半数は新たに入職し、労働市場に留まっているのである。

  一方、女性(図2.)は、男性に比べて59歳までのどの年齢階級においても、入職率と離職率がほぼ拮抗している。パートなど非正規で働く者が多いからだと推測される。30~44歳での入職率が特に高くなっているが、60~64歳でも13.5%と比較的高い。

  60歳以上のシニア層では、離職率の乖離が目立つ。とくに65歳以上の高齢女性では、離職率は入職率の2倍に上る。離職したまま再び労働市場に回帰するものが比較的少ないと言えるだろう。

 図3.は、転職入職率を年齢階級別、男女別に抽出したものだ。転職入職率とは、新規入職者の内、前職を辞して新たな職に就いた者の割合のことだ。前職と現職のインターバルは様々だろうが、いずれにしても、労働市場にシームレスに留まっている者の割合だと言える。

 男性の場合、30歳代から徐々に減少に転じ、50歳代後半に底を打ったのち、60歳以上で再度上昇するという、U字カーブを描き、60~64歳で最大の13.4%を記録する。この年齢階級の入職率は14.5%だから、入職者の90%以上が、転職による入職ということになる。還暦を過ぎても働くということは、今ではすでに常識のようだ。

 一方女性は、ほとんどの年齢階級を通じて、転職入職率は大きな変化がない。有職者は一定の割合で、転職を経験しているようだ。唯一の例外は65歳以上でその転職入職率は男性の50%程度だ。高齢女性の労働市場からの逸脱時期は、男性より早いようだ。(次回に続く)

  株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男