2月に公表された「家計調査報告(家計収支編)2014年平均速報」から、
シニアに関する消費のポイントのいくつかを見てゆくことにする。
図1は年齢階級別の消費支出総額と、食料支出を抽出したもの。
消費支出総額自体は、50歳代をピークに、年齢が上がるほど減少している。
総額に比べてこと食料支出に限れば、その減少幅は非常に緩やかだ。
50歳代を100として、総額では85と15%の減少。
一方、食料支出は同じく50代を100とすれば、97。
これは、誤差範囲と言ってよい僅差である。
60代ともなれば、家族の成員数も減るし、食も細る。
常識的に考えれば、ガクンと減っておかしくない費目だと言えるのだが、
あにはからんや、食への支出は、40代から60代まで、
ほぼ拮抗したブロードピークを形成しているのである。
この意外性を解くカギのひとつが、ファミリーレストランの好調ぶり。
日経新聞(2014.4.26)によれば
「単価の高いメニューを扱う店の売り上げが11カ月連続のプラス」であり、
この好調さを支えているのが、シニア層」なのだそうだ。
面白いのが、「ファミレスが特に強化したいのがステーキ」という事実。
しかも、g数をシニア向けに控えるなどの
『手加減』もあまりしていないらしい。
ここからは、「健康によいものを多品種少しずつ」という
『草食系』のシニア像は浮かび上がってこない。
むしろ、現役バリバリの『肉食系』の姿が立ち上がってくる。
別の支出科目に目を転じてみよう。
図2は、年齢階級別の支出額を比較したもの。
食費に加え、住居・保健医療・交際費をグラフ上にプロットしてみた。
年代が上がるほど保健医療支出が漸増するのは常識として肯えるが、
面白い結果になったのが交際費。
40代から急速に支出額が伸び、60代でピークを迎えている。
70代になって漸減するのだが、
それでも50代を上回っていることに改めて驚かされる。
ここでも「穏やかに暮らすお年寄り」という、
従来からの プロトタイプとはかけ離れた、アクティブな姿が見え隠れする。
消費性向という側面から見ても、ユニークな結果が見て取れる。(図3)
「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」という条件付きながら、
60代以上の消費性向は、なんと約95%!
他の年齢層より頭一つ抜けた、極めて高い数値である。
言い換えれば、所得の大半が消費に割かれているということだ。
極端な言葉で言えば、
「肉食系で社交的。しかも宵越しの金は持たない、
江戸っ子的なきっぷのよさ」が、
いまどきシニアの一典型であることを 家計調査の数字が雄弁に語っている。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2023年9月5日
2023年6月28日
2022年8月26日