(中から続く)
2040年まで年々増加し続ける65歳以上の雇用について、当然、企業の方も、手をこまねいているわけではない。
図6.は、60代後半層の雇用確保に必要と思われる取組みを選択肢の中から挙げてもらったもの。
最も多かったのが、「高年齢者の健康確保措置」、次いで「継続雇用者の処遇の改定」。この2項目が全体の中で突出している。
興味深いのが第3位に挙げられている、「特に必要な取組みはない」という選択肢。高齢者だからといって特別視しないという、自然体の姿勢が窺える。
厚生労働省の調査によれば、65歳以上で「自分は健康」と考える人は78%。これは20~30代の71%を上回る数字だ。
こういった背景も、「特に必要な取組みはない」という見解の理由のひとつではあるだろう。
図7.図8.は、「65歳以上の雇用・就業のあり方に関する企業の考え方」を尋ねたもの。図7.は65~69歳、図8.は70~74歳を想定しての回答だ。
両者に共通してスコアが高いのが、「高年齢者は個々人で異なるため、会社の基準を設けて適合者を雇用したい」「健康の維持・管理に注力してほしい」という選択肢。
「高年齢者は個々人で異なるため、会社の基準を設けて適合者を雇用したい」という声は、60~65歳では過半数を越える。一方の70~74歳のレンジでは、それが約3分の1に留まる。
65~69歳については、ひとしなみに高齢者と捉えず、個性ある働き手として評価しようという考え方が主流を占めてきているとも考察できる。
70歳を越えると、その考え方は少し衰えてきている。それとは逆に、「健康の維持・管理に注力してほしい」という声は、70~74歳で5ポイントも伸びている。
興味深いのは、「雇用より、地域のボランティア活動で活躍してほしい」、「雇用より、シルバー人材センターを利用してほしい」という項目。
65~69歳では、10%に満たない数字が、70~74歳になると、それぞれ13.6%、13.4%と、ある程度影響力のあるスコアに「成長」している。「対価を伴う労働」以外の社会貢献の適齢期は、今や70歳内外なのかもしれない。
一方で、シニアの働き方も多様化してきている。中小企業白書によれば、起業家で最も多いのが60歳以上で、全体の32%を占めている。これは、30年前の4倍に達する数字だと言う。
「決して背伸びせず、自分のやりたい仕事を追う、【プチ起業】」だとも言う。また、自分のスキルを活かすために「シニア派遣」の道を選ぶ人もいるという。(2015年12月13日 日本経済新聞朝刊)
65歳までの雇用継続を義務付けたことに伴う、企業の人件費負担は、1~2兆という試算もある。(同新聞) 65歳以上の働き続けたい人にまで、雇用を義務付ければ、現役世代にしわ寄せが行きかねない。
そのためにも、シニアの雇用についての多様な受け皿は、今後ますます必要になってくるだろう。
日本SPセンター シニアマーケティング研究室 中田典男
2024年2月8日
2023年8月10日
2023年6月12日