昨年、2025年は団塊の世代がすべて75歳を超える年であった。当室は「よりよく生きる、よりよく老いる」ため、後期高齢者をもっと知り、75歳以降の加齢についてももっと注目すべきと提案してきている。
少し先を見れば2035年の日本の18歳人口は100万人を下回り、「団塊の世代」はすべて85歳以上となる。これは人口構成において、大きな変化をもたらす。
80歳、85歳という、さらに上世代の高齢者を私たちはよくわかっているだろうか?十把一絡げにしてきていなかっただろうか?
現在、85歳以上人口は690万人/人口比5.5%、80歳以上は1,289万人/人口比10.5%(2025年9月14日総務省統計トピックス No.146 統計からみた我が国の高齢者 より)。一方で、2035年の80歳以上人口は、 1,607万人/人口比13.8%(『日本の将来推計人口 令和5年推計』(国立社会保障・人口問題研究所)による)。

2035年には全世帯の17%が、80歳以上世帯主
自宅・地域に求められる財・サービスは、変わる
2025年は団塊の世代がすべて75歳超となり、後期高齢者の生きてきた時代・背景が変化することで、高齢者市場に発生するニーズや重視する点も変化・多様化。新しい商材発掘の源泉でもあることをお伝えしてきた。
団塊の世代は人口規模と当該世代が生きてきた時代・経験により、「後期高齢者のニーズ」を多様化する。一方で、変化する社会条件(人口構造の変化、人手不足の恒常化、デジタル化の進行など)も新たなニーズをつくりだす。
10年先の高齢者市場にも、超高齢者層を占める世代が変化することと当該人口が増加することで、新たなニーズが生まれるだろう。
自宅・地域には、「少し不自由が生じているけれど、高齢者だけで暮らしている」人が、相当に増えると考えられる。このことが、人口構成比としての変化もさることながら、世帯別へのサービス創出に大きく関係すると考える。
世帯主が80歳以上の家は、2025年の7,608千世帯から2035年には9,596千世帯。126%になると予測されている。
10年後の世帯数の予測:80歳以上世帯主は、1.26倍

これらのうち特に女性80-94歳世帯は単身世帯が多く、家庭内の助け合いを期待できない人たちが多い。

そして超高齢期ともいえる80歳以上では、半数以上が「身体が虚弱化したときも、自宅で暮らしたい」という。

60代前半でも半数近くは「自宅」を希望している。それでも若いうちはいろいろな可能性を考えているが、高齢になるほど自宅志向に絞られていく。 ニュースや企業活動を見ていると施設等利用が進んでいるように思うかもしれないが、施設等の世帯人員割合は全体的には横ばい推移が予測されている。むしろ男性は95~99歳以上、女性は85~89歳以上の年齢層で、施設等の人員割合はわずかだが低下傾向と見通されている。(2035年の85歳以上 男性:13.8%、女性:25.9%)(いずれも日本の将来推計人口令(和5年推計) 国立社会保障・人口問題研究所 より)
こうなってくると80歳超も自宅・地域で暮らしたい方々の希望を叶える、財・サービスの充実が望まれる。
80歳以上のニーズを私たちは
把握してきているだろうか?
地域・自宅で暮らす超高齢者の増加は、これまで限られていた「地域・自宅においてニーズ」を改めて顕在化させる。超高齢者の在宅生活におけるニーズに応える財やサービスの導出・商材化に、今から取り組むべきだろう。
では超高齢者の自宅・地域生活における困りごとや懸念点とは、なんであろうか?国による大規模調査ではなかなか該当するものが見当たらないが、地方自治体では独自に調査が行われている。
たとえば当該年代の市民が感じている懸念や不自由、暮らしの傾向について以下のようなデータがある。

高齢者の転倒注意喚起は多くの方に届いている。周りの高齢者との会話からも、自身は意識の高い方が多いことはよくわかる。「とても不安」と「やや不安」を合計すると、85歳以上では8割以上の方が「不安」としている。
また日常生活における不自由について、全国調査では身の周りについて以下のような調査結果がある。

しかし日常生活に密着した不自由については、青森県弘前市における調査がより詳細だ。一般高齢者と要支援高齢者別の調査によって、以下のような不自由を感じている人がいることがわかっている。

「要支援高齢者」は「要介護高齢者」と異なり、利用できる介護保険で利用できるサービスがかなり限られている。いくらか身体的不自由がありながらも自宅で自立して暮らしている高齢者が抱える、日常生活において小さく見えてもさまざまな不自由を抱えている。行動や交流が限られたり、自由な気持ちが減じられたりして、精神面・肉体面の健康を損ねるであろうことは容易に想像できる。
多くの不自由の根っこは、 “外出の自由”
調査ではさまざまな不自由について質問している。実際、加齢に伴い心身の能力低下から、課題は発生しいろいろな場面で不自由なのだが、よく考えると上記の不自由は以下のようにまとめられる。
1.支援が必要になっていてもいなくても「人との交流」を思うようにできていないことに、不自由を感じている人が多い。
2.「要支援高齢者」は行動の不自由さの延長に、生活に直結する買い物や家事も不自由としている人も多い。(一般高齢者では不自由と考えている人は相対的に少ない)
3.公共交通機関を使っての外出(大きな行動の自由)について、要支援高齢者は半数以上、一般高齢者は4人に1人以上が「思うようにできない」。
4.「年金などの書類が書けない」不自由を感じている人は、支援の要不要にかかわらず少なくない。(一般高齢者3割超、要支援高齢者4割超)
4.については物理的に手・指が思うように動かせないため書けないのか、書類がわかりにくいため書けないのか、この調査結果からは推測できない。原因が異なると解決方法にも違いがでてきそうなので、ここでは置いておく。

データから、生存に関わる買い物や家事はできる範囲で何とかやりとげる。あるいは周りの助け(家族や知人含め)を得ることもできそうだ。しかし「人に会う」、「楽しみのために出かける」は、自分でできなければ諦めることが多いかもしれない。「要支援高齢者」も買い物に不自由としている人が3人に1人いる。介護保険を使えるのではないかと思われるかもしれないが、介護保険で依頼できる買い物や買い物同行は範囲が限られている。費用の面での制約もあるし、生活圏外や複数店舗での買い物、嗜好品や贈答品の買い物には利用できない。
自分で頑張るか、それが無理ならあきらめる。そんな場面は80歳超では少なくないと推測できる。だからこそ金言で紹介した「何か楽しいことはないかなと、」といった声が聞こえてくるのだろう。
豊かな80歳以降のくらしには、まずは<“生存に直結する事由” 以外の外出>を自由にする、サービス・財の開発が急がれる。
株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 石山温子
2026年1月16日
2025年12月19日
2025年11月14日