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数ある介護サービス、利用者の多いものは?

 介護サービスと言えば、在宅、施設に大別されるが、目的別では介護であったり、リハビリであったり、また、同じ在宅と言っても、通所と訪問に分けられる。一方で介護予防サービスもある。このようにサービスの種類は非常に多岐にわたっているが、どんなサービスの利用者が多いのかは、案外知られていないのではないだろうか? 本稿では、受給者数から見て、どのサービスが多数派なのか、サービスの受給者数の内訳をマクロ的に概観してゆきたい。引用したデータはすべて、「令和4年度 介護給付費等実態統計」に拠る。

図1.

介護給付費等実態統計 各年4月審査分(厚生労働省)

 図1.は要介護等認定者数と介護(予防)サービスの受給者を2023年(令和5年)と2022年(令和4年)でその増減を比較したものだ(各年4月審査分)。当然ながら、認定されているからと言って、認定者全員がサービスを受給しているわけではない。図1.は各年4月の審査分をベースにしているので、通年の結果とは異なるが、認定者のうち、4人に1人は受給者ではない…。これがこの1~2年の傾向と言える。人数的には、1年前と比べて微増となっている。

図2.


介護給付費等実態統計 各年4月審査分(厚生労働省)

 男女別に見ると、男性に比べて女性の方が認定者数、受給者数とも圧倒的に多く、いずれもダブルスコア以上の開きになっている。女性では、80歳以上で急激に認定されていることも、大きな要因だろう。また、認定者数に対する受給者の割合も、女性が男性を上回っている(各年4月審査分)。
 受給者ベースでは、では男女とも、令和5年(2023年)が令和4年(2022年を)わずかに上回っているが、この傾向は数年のスパンでも同様になっている。年間実受給者(※1)は、漸増傾向が続いているのだ。(図3.)

図3.

介護給付費等実態統計 各年4月審査分(厚生労働省)

図4.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)
※「年間実受給者数」は、各年度とも4月から翌年3月の1年間において一度でも介護サービスを受給したことのある者の数であり、同一人が2回以上受給した場合は1人として計上している。ただし、当該期間中に被保険者番号の変更があった場合には、別受給者として計上している

 図4.は、介護サービス種別に受給人口を見たものだ。介護サービス(主に要介護1~5で受けられるサービス)の一番大きな括りでは、4つに分けられる。この中で最も多いのが、居宅サービスで約433万人。居宅と二項区分で語られることが多い施設サービスは約133万人。この数字は居宅サービス受給者の3分の1にも満たない。(2番目に多い居宅介護支援とは、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらうサービスなので、多いのは当然と言える)

 主に要支援1~2の人が受給する介護予防サービスにおいても、居宅が主流となっている。但し、もとより施設サービスは存在しない。受給人口規模も介護サービスよりも格段に小さい。

図5.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

 では、介護(予防)サービスで主流を占める居宅サービスには、どのような種類があって、どれほどの受給人口規模があるのだろうか?

図6.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

 介護サービスでは、訪問通所型が群を抜いて実受給者が多い結果となった。訪問通所とは、施設に通う(通所)介護サービスと居宅に来てもらう介護サービスのことである。次いで、居宅療養管理指導が続くが、こちらは約140万人強で、訪問通所型の約38%に過ぎない。因みに居宅療養管理指導とは、「介護サービス利用上の注意事項、介護方法などについての指導・助言を受ける」サービスのことであり、通所リハや訪問介護のように実際の行為を伴うものではない。

図7.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

 この傾向は、実数値に大きな差はあるものの、介護予防サービスでも同様であり、訪問通所型が他のサービスを圧倒している(図7.)。
では、この訪問通所型サービスをさらに深掘りしてみてゆこう。図8.は介護サービス、図9.は介護予防サービスの訪問介護型サービスメニューの内訳になる。

図8.


令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

図9.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

 介護サービスの7つのサービスメニューの中で、実受給者が最も多いのが、福祉用具貸与で、約282万人。次いで通所介護の約162万人となっている。訪問・通所を問わず、介護系サービスが上位に来ている。リハビリテーション系のサービスメニューは、意外にも実受給者が少ない。
 介護予防サービスも福祉用具貸与の実受給者が最も多い。次いで介護予防通所リハビリテーションがそれに次ぐ。ここは、介護サービスとは異なる。

図10.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

図11.

令和4年度 介護給付費等実態統計(厚生労働省)

 最後に訪問通所型サービスメニューごとの一人当たりの費用(令和4年4月月額)を見てゆくことにしよう。図10.は介護サービス、図11.は介護予防サービスの一人あたりの費用だ。因みに、ここで言う費用とは、「審査月に原審査で決定された額」であり、保険給付額と公費負担額、利用者負担額の合計額を意味する。
 介護サービスの中では、通所介護の費用額が最も高く、月額96,900円とほぼ10万円に近い。次いで、訪問介護の88,100円、通所リハビリテーションの81,600円と続く。実受給者が最も多い福祉用具貸与は、他のサ-ビスメニューと比べて際立って安く、15,200円となっている。
介護予防サービスは、介護サービスに比べて費用は安価で、概ね3~4万円の値幅。福祉用具貸与のみ6,900円と安価になっている。

 以上、縷々紹介してきたが、ポイントをまとめると以下のようになる。
1.要介護等認定者数のうち介護(予防)サービスの受給者は75%程度である
2.そのサービス受給者は、ここ数年漸増傾向が続いている
3.介護サービスの中では、居宅サービス受給者が多く、施設サービスの3倍を超えている
4.居宅サービスの中では、訪問通所型サービスが主流になっている
5.訪問通所型サービスの中では、福祉用具貸与がずば抜けて受給人数が多く、通所介護、訪問介護がこれに続く。この3つがメジャーだと言える
6.一人当たりの費用は訪問介護、通所介護で大きく、福祉用具貸与は小さい
7.介護予防サービスも概ね同様の傾向だが、受給人数は介護サービスの3分の1から4分の1と小さい

 要介護等認定者(当研究室では「ケアシニア」と呼ぶ)を細かく分類してみると、人数的には居宅サービス、その中でも、訪問通所サービスこそ、人数的に、サービスの大所を占めていることが、明らかになった。

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 特別顧問 中田典男