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終活を始める高齢者の気持ちと行動(下)

佐々木 さやか氏
はる社会福祉士事務所 代表
社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー

佐々木 さやか氏

老後準備をしている人 そのきっかけとは
 最近では「自分が入る老人ホームを元気な時に決めておきたい」という方が増えてきました。特に、頼れる親族が身近にいない場合、元気な時に老人ホームに移り住み、いざという時に備えておきたいと思われるようです。
 そういうお客様向けに、はる社会福祉士事務所では、老人ホーム選びをサポートするサービスがあります。
 当該サービスを利用したお客様に、「なぜ老後の準備をしようと思ったのか」を尋ねました。

〇「衰えを感じた」
 「この前、美容院の予約をすっかり忘れていて、美容院から電話がかかってくるまで気付かなかったの。自分ではしっかりしているつもりだったけれど、衰えてきたと感じたわ」80代の女性の言葉です。

〇「心のどこかで頼りにしていた人が、当てにならないと気付いた」
 「姪に『自分の家族のことで手いっぱい。叔母さんの老後までは面倒見られないと思っていてね』とはっきり言われました」
 「甥からの連絡はほとんどありません。こちらからメールを送っても返信は一か月後。私を気にかけてくれていると思っていたのは、勘違いだと気付きました」
 いずれも70歳代のお客様の言葉です。

 いくら親族であっても、できることできないことがあります。
 良い関係を保つためにも、「頼らない」という決断をする必要があるのかもしれません。

〇「災害、犯罪が心配」
 大きな地震や台風の後には、当事務所へのお問い合わせが増えます。
あるお客様は被災地のニュースを見て、「もし断水になったら、自力で給水所から水を運ぶことができない」そう思って老人ホームへの入居を決めました。
 その他にも高齢者を狙った犯罪は毎日のように報道されています。中には命を奪われてしまう痛ましい事件もあります。
 それらの被害に遭わないために、日頃から近所の人と声をかけ合うようになったお客様もおられます。

〇子どもを安心させたい
 頼れる子どもがいる場合でも、元気な時から老人ホームを選んで、もしもに備える人もいます。
 先日ご相談に訪れた団塊世代の女性です。
 「近所に住む息子たちは優しいので、将来私のサポートしてくれると思いますが、それが心苦しい。息子たちを安心させたい」という理由から、老人ホーム探しを始めました。

 自分のためもありますが、周囲を安心させるためというのも、終活を始める理由になります。

はる社会福祉士事務所が提供している老人ホーム見学ツアーとは
 はる社会福祉士事務所のオリジナル企画です。私が選定した老人ホームへお客様をお連れし、老人ホームの見学時に気をつけること、何を見て、何を質問するのかを学び、自分に合った老人ホームを選ぶための「見る目」を養う場です。

見る目を養うための老人ホーム見学ツアー

老人ホーム見学ツアーの特徴
1.少人数制
参加は最大6人まで。少人数制なので、ゆったりと質問がしやすい雰囲気。

2.老人ホーム側には個人情報を伝えない
お客様の個人情報は、見学先の老人ホームに伝えないため、営業や売り込みが一切なく、安心して見学ができる。

3.公平な視点で選定
老人ホームとの金銭のやり取りは一切なく、公平な視点で選定した老人ホームをご紹介しています。

お客様からは、以下のようなお声をいただいています。

◎「行動したことで、自分の気持ちが見えてきた」
自分がどうしたいのかが見えた。それに向けた準備をしようと思う。老人ホームに入居するつもりで見学をしたが、自分にはまだ早いということがわかった。85歳位まで自宅で暮らせる準備をしようと思った。

◎「こんなに体力が必要と思っていなかった」
老人ホーム見学、選定には、体力と理解力が必要だと、やってみて初めてわかった。
1件見学に行くだけで、疲れる。体力のあるうちに準備しておかないといけないと感じて、1年以内に入居先を決めると決断。

上手に準備を進めている人の特徴
◎正確な情報を手に入れるために行動する
 複数の専門家の話を聞くことを心がけていらっしゃいます。
 専門家と言っても、考え方や専門性は様々で、中にはむやみに不安をあおるようなことばかり言う専門家もいます。ですから、書籍、新聞、インターネットからも情報を集めておられる方が多いのも特徴です。
 私がシニア向け講座でいつもお伝えするのは、「誰が」「何を根拠に」発信しているのかを確かめましょうということです。

◎メリットとリスクを分析できている
 誰に何を頼ったとしても、メリットとリスクは付き物です。
 「メリットは○○だけど、△△が心配」と書き出す方法を取っている方も。
 リスクはなるべく避けたいところですが、自分が許容できるリスクであれば良しとするという考え方も大切です。リスクゼロを探し続ける間に年を重ねて、手遅れになってしまうこともあるからです。

◎早めに将来頼れる人を見つけて、依頼している
 将来、もしもの時に頼れる人を見つけておく大切さは前述の通りです。
 もう少し付け加えるなら、頼れる人は早めに見つけておき、「何を」「どの時期に」頼みたいのかを伝えることも忘れてはいけません。

 将来への不安が膨らんだ時に様々なことを頼める人を見つけるには、時間がかかります。相手の人柄、人生観、住んでいる場所、年齢…など多くのことを知る必要があります。専門家に依頼する場合は、報酬も気になります。
 自分に合う専門家を見つけるために、人に聞いたり、職能団体へ問い合わせたりと、行動に移している方は早めに頼れる専門家を見つけている印象があります。

 何を想定して依頼すればよいかわからない方には、市販のエンディングノートを購入し、書くことをお勧めしています。
 将来の希望を言葉にして書き込むと、「じゃあ、これは誰が手続きをしてくれるの?」と、誰に頼んでおくのが最適なのかが見えてきます。

準備をしたことで満足を得ている人

 富美子さん(90代・仮名)は、東北地方に姪がいますが、もう何十年も会っていません。
 近くに頼れる親類縁者はいないので、70代後半に弁護士と契約をして、月に1回自宅に様子を見に来てもらっています。その他、万が一認知症になり判断能力が低下した時にはその弁護士が後見人になるという契約(任意後見契約)も結んでいます。
 問題なく一人暮らしを続けていましたが、昨年視力低下とコロナにかかったことから、急に一人暮らしが不安になってしまいました。
 それを富美子さんから聞いた弁護士から、私へ相談が入りました。「本人の希望に合う老人ホームを探してほしい」とのことで、予算に合う老人ホームをご案内しました。
 2か所の老人ホームの体験入居を経た後、入居されました。入居契約、引っ越しの手配などは、弁護士のサポートを受けることができました。
 富美子さんは「自分が思っていたより良い老人ホームに入ることができてほっとしました。ここならお金の心配もいらないと先生(弁護士)から聞いて、ありがたいです」と、安心している様子です。

頼れる専門家を見つけるにはどうすれば良いか

 「頼れる人を見つけて、依頼する」が実は一番のハードルです。
 子どもがいない人が、親族(甥や姪など)に自分の老後のサポートを頼めない場合、専門家に依頼することができます。主には「見守り契約」「任意後見契約」です。
 前述の通り、専門家と言っても資格や理念、実績、報酬は千差万別です。超高齢社会の影響で、上記の契約を業務とする専門家が増えてきました。
 頼れる専門家を見つける方法は、一言で言うと「行動あるのみ」です。
 知人に紹介してもらう、相談窓口に足を運ぶ、専門家のセミナーや講座に参加する、本を読む、新聞を読む…できることはたくさんあります。

将来の安心のためには行動あるのみ

 先日、お客様が「佐々木さんに教えてもらった通り、○○会(とある職種の職能団体)に相談に行ってきました。そこで紹介された人は印象が良くなかったので、他の人を紹介してもらえるよう頼んできました」と話してくださいました。
 この方は行動することで、自分にとって合わない人がどういう人なのかがわかり、経験値が上がりました。おそらく今後も行動することで、より合う人合わない人がわかって来るでしょう。

お客様との信頼関係を構築するには
 私を信頼して、老後のことを依頼されているお客様もおられます。
 私がお客様との信頼関係をどのようにして築いているのかをご紹介します。

1.時間をかける
 お客様は、勉強熱心で慎重な方が多いと常々感じています。そういった方々の信頼を得るには、時間をかける必要があります。
 講座、老人ホーム見学ツアー、コラム、メディア、個別相談と様々なサービスや媒体から、私が信頼に値するかを見ていただいています。

2.興味があるテーマ
 多くのシニアは老人ホームに興味がありながらも、知る機会は少なく、誰に聞けば正しい情報を得られるのかを知りません。
 カルチャーセンターで定期開講している「かしこい老人ホームの選び方講座」では、座学と見学ツアーがセットになっています。
百聞は一見に如かず、知りたいことがしっかり学べたと感じていただくことで、信頼につながります。

3.知的好奇心を刺激する
 講座やコラムでご紹介する内容は、すべて私の経験に基づいています。超高齢社会で何が起こっているのかを、事例だけではなく法律や政治の観点からもお伝えしています。
 「自分の老後を考えるだけではなく、社会課題として介護を考えるようになりました」とご感想をいただいたことがあります。
 お客様の学びたいという気持ちを満たす工夫を凝らしています。

4.気持ちの変化に合わせる
 終活には心変わりが付きものです。
 例えば「元気な時に老人ホームに入居して安心したい」と思っていた方が、数件を見学するうちに「元気な時に入りたくない。一人暮らしができなくなったら老人ホームに入居する」と気持ちが変わることがあります。

 こういった変化は当たり前であり、むしろ必要だと私は考えています。行動したり何かを経験したからこそ得られた結果だからです。
 お客様とはLINEでのやり取りが多いのですが、揺れ動く気持ちをメッセージで送ってこられた時は、肯定したり励ましたり、その時必要な情報を提示したりと、寄り添うようにコミュニケーションを取っています。
 丁寧に、その方に合わせたコミュニケーションが信頼へとつながっているのでしょう。

終活は今の大切さを知る活動
 最後に、老人ホーム見学ツアーに参加しながら、終活に取り組んでいる女性からいただいたメッセージをご紹介します。

「参加してみて新しい発見。先の備えをしっかり考えるチャンスをいただき、今の時間の大切さも知ることができました。今をもっと充実させていきたいと思います」

 老後は誰にでも訪れる可能性があり、今の延長線上にあります。
自分らしい今があるから、自分らしい老後につながる。お客様にそう感じていただくためのサービスをこれからも提供していきます。

はる社会福祉士事務所 代表:佐々木さやか)

佐々木 さやか氏
はる社会福祉士事務所 代表
社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー

佐々木 さやか氏

老人ホームの介護員、社会福祉法人 大阪市社会福祉協議会で地域包括支援センター相談員を経て現職。
 これまでに受けた介護相談は600件を上回り、老人ホーム選びやシニアライフ準備についての相談が多く寄せられている。
 近鉄文化サロン、NHK文化センター「かしこい老人ホームの選び方講座」「おひとりさま終活講座」、現役世代向けセミナー「仕事と介護の両立講座」講師。

メディア実績:NHK「かんさい熱視線」、日本経済新聞「『介護と両立』 政治に問う 働く中高年ら、年10万人離職 支援政策の拡充求める」など