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◆シニアが体験、EXPO2025◆
第2回:設備は及第点ながら運営は?

シニアにとって一番気になるトイレは充実

 当日は天気が良く、4月にしては暑い日となった。暑くなると熱中症が気になるが、水分補給にベンダー型の給水器(マイボトルに無料で冷水を補給できる)がそこここにあり、とくに並ぶことなく給水できた。
 ベンチもかなりあるが、日陰で涼しいところとなると数は限られそう。シルバーシートのような優先席はないので、シニアは混雑する日や暑い期間(夏休みなど)は避けた方が良さそうだ。その日も会場内で倒れた人が救急車に運び込まれているのを見た。

 
 シニアが気になるトイレだが、会場にはかなりのトイレがある。話題になったチョット変わったトイレやおしゃれなトイレもあるが、施設にかなりの数で設置されている。話題のトイレには列ができていたが、ほとんどのトイレは並んだり、混雑している様子は見られなかった。中も覗いてみたが、新しいということもあり、清潔で明るく使いやすくできていた。

 トイレでは「バリアフリー」の他に「オールジェンダー」のトイレがあり、一瞬、何のことかわからなかった。要は個室のトイレが並んでおり、男性も女性も使えるというものである。私がそこでまごまごしていると、清掃係の女性が「どこでも使えますよ」と声をかけてくれた。多分、私のようにまごついている人が多いのだろう。


レストランはもちろん、自販機さえ現金が使えない

 シニアにとってこの万博大きなの課題は「デジタルマネー問題」である。会場内で現金は一切使えない。飲み物の自販機までもそうである。これはシニアにとって大きなバリアになる。
 クレジットカードが使えるのでシニアでもなんとか対応はできるが、高齢になってクレジットカードを解約したというシニアもいる。電子マネーとなるとやはりシニアにはハードルが高い。何より「上手く使えるか、まごまごして後ろの人に迷惑をかけないか」が心配だ。

 デジタル社会の万博だから会場では電子マネーを使って欲しい-という気持ちはわからないではない。しかし高齢者が人口の約3割を占めるこの国で、高齢者が一番使いやすい「現金」を使えないということは考えられない。
 我が家で購読している新聞の読者欄に「万博会場で現金が使えないのは不安」という投稿がされていたのは当然である。

 私はクレジットカードをメインにして、あとスマホでのペイペイとした。交通系カードにも少し余分にチャージしておいた。電子マネーになれないシニアにとって「チャージ」することもハードルが高い作業の1つであることを忘れないでいただきたい。

すうどん一杯980円にシニアはひるむ

 そうこうするうちに昼どきになったので、持参したサンドイッチをベンチに腰掛けて食べることに。とくにベンチを探すことはなかったが、日陰にあるベンチはすでに満席に近い状態だった。これから暑い季節になれば「日陰」は取り合いになるかもしれない。

 レストランやフードコートは混んでいるところが多い。大きなフードコートもあるが、昼どきはかなり混んでいた。1日の来場者が10万人を大きく超えてくると、さらに混雑するので、こちらでも並ぶ必要がある。コンビニも入店するときとレジで長い列ができていた。「コンビニでおにぎりでも」という考えは甘い。

 レストランやフードコートのメニューの値段は当然だが「万博価格」。たまたま入った、うどんや粉ものなど関西のメニューをメインにしたコートで、いわゆる「すうどん」が980円だった。あとは推して知るべし。ただ、ここのコートの中華メニューは安くはないが、納得できる値段に設定されていた。


立って並ぶのはシニアにとって辛い

 食事を済ませて、家内がテレビのニュースで紹介されていた「ヨルダン館」に行ってみたいというので、マップを見ながら会場内を進む。途中にあるスイス館や中国館といった人気のパビリオンはいずれも入場待ちの長い列ができていた。いずれも1時間、2時間の待ち時間。予約なしで入れる館も入場待ちが出るので、予約制に変更を検討している館もあると聞く。


 目的のヨルダン館に行ってみると、100人くらいが並んでいる。ニュースで紹介されたこともあるかもしれない。これなら待てるかと並んだ。この館の目玉は「サハラ砂漠の砂」が敷き詰められており、砂漠に立ったような気分が味わえるというもの。
 並んで待っていると20人くらいを1単位として入場させている。時間を計っていたら大体20分くらいで、入れ替わる。われわれは4組目では入れたので、1時間ちょっと待った。

 立って待つ、というのはシニアにとって厳しい。私は1時間歩くのは何でもないが、1時間じっと立って待つのは勘弁して欲しい。待っているところは建物の外で全く日陰がない。4月のことだからまだしも、6月以降の暑い日にここに並ベというのはシニアには酷。並んでいる中で折りたたみ式の椅子を持ち込んでいる人がいたが、そういう備えも必要だろう。

やっと入って、まずはヨルダンの歴史や名所、旧跡が映像パネルで紹介される。それが終わると急に靴と靴下を脱げという。砂漠の砂の上に立つからである。慌ててみんなが素足になる。
 長い間待つのだから、ひとこと「中では靴、靴下を脱いでいただきます」といっておいてくれれば準備もできて、入ってからもスムーズになるはず。その辺りの運営に一工夫が必要だろう。

シニアにも「体験」できるコンテンツは有意義

 確かに、素足でサハラ砂漠の砂の上に立つと気持ちよい。砂漠の砂はこんなに冷たいのか、ということが実感できた。それと砂が細かく、払うとぱっと砂が落ちて、皮膚につかない。日本の砂浜の砂と全く違う。まさにパウダーのようである。
 家内と「これは体験しないとわからないね」といいながら館をでた。待たされる時間が長く、「もういいか」とも途中で思ったが、体験が良かったので「待っても良かった」という気持ちになった。そのことが重要なのであろう。

 パビリオンの予約は全くできなかったのと、当日入場可のパビリオンはいずれも入館待ちの長い列。簡単に見られる所は見て、行こうと決めていたヨルダン館も見たので、そろそろ引き上げようと思ったのが午後3時ごろ。
 シニアはあまり遅くに家に帰り着くのを好まない。今から帰れば5時くらいに帰れるということと、もう少し遅くなると帰りの地下鉄が混雑しそうと思い、地下鉄の「夢洲駅」に近い東ゲートに向かった。

 東ゲートに行ってみると、家路につく人がかなりいた。混雑、というほどではないが、かなりの人の数である。地下鉄で本町、御堂筋線に乗り換えて淀屋橋、そこから京阪特急で三条まで戻ってきた。歩数計の数字は13,000歩あまり。運動としては適量である。

 開幕してからそれほど期間が経っていない平日だったので、行き帰りは比較的スムーズだった。入場者が増えてくる夏休み以降はかなりの混雑が予想される。シニアは夏休み前の平日がおすすめである。会場が近い人は夜の入場が良いかもしれない。日中の暑さはないし、パビリオンの予約も取りやすいし、当日もあまり並ばずに入れるようだ。

 次回は私自身の今回のEXPO体験を通じて、シニアマーケティングにおける実践的な示唆を抽出し、整理したのでご覧いただきたい。

 次回は◆シニアが体験、EXPO2025◆ 第3回:「シニアマーケティング」へのヒント

株式会社日本SPセンター シニアマーケティング研究室 特別顧問 倉内直也