2015年10月21日
平均寿命と健康寿命のギャップが問題に
厚生労働省の調査によると平成22年度における日本人男性の『平均寿命』は79.6歳、女性は86.3歳。これに対して『健康寿命』(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は男性70.4歳、女性は73.6歳。平均寿命と健康寿命との差は男性で9.1年、女性で12.7年となる(平成23年の平均寿命は男性80.2歳、女性86.6歳)。
さらに健康寿命を平成13年と平成22年で比べると、男性69.40年から70.42年(1.02年の延び)、女性72.65年から73.62年(0.97年の延び)に。一方、平均寿命は男性78.07年から79.55年(1.48年の延び)、女性84.93年から86.30年(1.37年の延び)となっている。
また、平成25年から平成34年にかけて、平均寿命は男性80.09年から81.15年(1.06年の延び)、女性86.80年から87.87年(1.07年の延び)と延びることが予測されている(国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口 平成24年1月推計)。
平均寿命の延伸とともに、不健康な期間が延びることが予想され、平均寿命の延び以上に健康寿命を延ばす(不健康な状態になる時点を遅らせる)ことが非常に重要である。
健康寿命を阻害する「ロコモ」
この健康寿命を阻害する3大因子が
1)内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)、いわゆる「メタボ」
2)運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、いわゆる「ロコモ」
3)認知症
と言われている。
「運動器症候群(ロコモティブシンドローム=以下ロコモ)とは「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」ということから日本整形外科学会が8年前に(2007年)に提唱した。
要介護者が介護を必要となった主な原因は、運動器疾患が21.1%(転倒、骨折10.2%、関節疾患10.9%)を占めており(平成22年調査)、今後の高齢化の進展を考えると、寝たきりにならないために運動器疾患をどう防ぐかということが課題になる。とくに女性は関節疾患による原因が14.1%を占め、男性の4.3%の3倍以上となっている。
ロコモは、ひざの疾患による痛みなど病気より広い概念である。「階段を昇るのに手すりが要る」「手を使わないと椅子から立ち上がれない」「15分も続けて歩けない」「立って靴下がはけない」「横断歩道を青信号で渡りきれない」など日常生活の阻害要因となる。こうしたロコモ原因はいろいろあるが、その大きな要因に足の筋力の衰えがあげられる。
足の筋肉が衰えると、筋肉がサポートしていた骨にも異常が現れ、ひざの痛みや骨折を引き起こしやすくなる。それを防ぐには適切な筋力強化が必要だ。
今やフィットネスクラブやジムを支えているのはシニアと言われているが、その人たちはもともと運動が苦にならない人が多い。では私のような運動嫌い、せいぜい散歩程度が関の山という、ものぐさシニアはどうすればよいのか。年齢を重ねるに従いますます身体を動かすことがおっくうになってくるのが実感だ。
足の筋力を強化することが大切なことはわかっている、サプリも飲んでいるが、ジムでのトレーニングやランニングまではできない、続かない…そんなシニアは少なくないはず。
健康寿命を伸ばす?「ひざトレーナー」
そのような中で「運動器症候群」への取り組みとして、パナソニックの「ひざトレーナー」EU-JLM50Sに注目している。久留米大学医学部 志波直人主任教授を中心としたグループが研究を進めてきたハイブリッドトレーニングにパナソニックのセンシング技術を活かしたものが「ひざトレーナー」。両者が産学共同で10年以上にわたり研究を続け、宇宙での実証実験などを重ね、ようやく製品化が実現したという。
http://panasonic.jp/fitness/products/eu-jlm50s.html
「ひざトレーナー」という名前だが、ひざ関節を鍛える器具ではない。ひざ周りの前後の筋肉(大腿四頭筋とハムストリングス)を鍛えるための器具。ひざ周りの筋肉の前後に電極を配置して、電気刺激をかけることにより筋力アップを図るというもの。詳しいメカニズム説明は製品のWEBサイトを参照していただきたい。
http://panasonic.jp/fitness/products/eu-jlm50s-mechanism.html
「ひざトレーナー」を装着して歩くと、「歩く」+「電気刺激」(パナソニックは『ハイブリッドトレーニング』と呼んでいる)でひざを伸ばす力が41.6%、ひざを曲げる力が37.3%アップしたという(パナソニック調べ)。
使用しての効果は個人差があろうが、私が注目する理由は2つ。
1)「ながら」トレーニングへの着目
2)系列販売店という販路の活用
ひとつ目の「ながらトレーニング」への着目は鋭い。パナソニックは製品の「ひざトレーナー」の使い方として「6つのコース」を提案しているが「いきいき歩くコース」や「座って刺激コース」などの「ながらコース」が含まれている。
「ひざトレーナー」なら散歩程度のウォーキングや、家事をしながら、究極はテレビを見ながら!筋肉が鍛えられるらしい。これなら、私のようなものぐさシニアでも続くかもしれない(ながらでも続くかどうかは個人の問題か…)。更に、雨の日や寒い冬に家の中で筋力アップできれば、家の近くを走るシニアランナーを見ながら「ああ、自分も運動しないと…」と思いながらもつい、テレビの前でゴロリと言うシニアにはうれしいだろう。
ふたつ目は「ひざトレーナー」を系列販売店、しかも認定店のみで売るという仕組み。「パナソニックによれば『高額(税抜き14万8000円)であることと健康機器のため、直接丁寧に説明することで満足して購入してもらうことが大切』としている。そのため、研修を含んだ認定店制度を取り入れた。「ひざトレーナー」の販売に手を上げてくれる販売店は1000店くらいの予想に対して、約5倍の4800店が名乗りを挙げた」そうである(日経MJ記事より)。
シニアにとって馴染みの電気店という親近感もあるし、何より、いつでも説明しに来てもらえる安心感も大きい。シニアも値段は無視はしないが、使い方を教えてもらえることのほうが重要だと考えている。とくにこれまでに使ったことがない「ひざトレーナー」のような新機能の製品には、つねに買っても使いこなせるだろうか、という不安がつきまとう。
その点、ややこしいWEBのID、パスワードや面倒なコールセンターの本人確認もなし、電話で親切に教えてくれる。場合によっては家に来て、手とり足とり教えてくれる系列販売店はありがたい。
販売店はそのことをきっかけにして健康器具にとどまらず、シニアのニーズに沿った他の家電製品を販売できるチャンスも生まれる。
こうした取り組みに加え、家電メーカーと系列販売店がさらに協力し、「ひざトレーナー」が継続して利用され続けるための施策アイデアが望まれる。たとえば、
1)定期的な「声掛け」「お伺い(成果確認など)」で継続利用を促進。
2)6つのメニューに加え、新しい運動メニューの提案
3)他の製品(調理器具など)と組み合わせたシニアのQOLアップ提案
高齢化が進展する中で、医療や介護は重要だが、「予防」という健康寿命を伸ばす取り組みも欠かせない。「ひざトレーナー」のようなシニアに身近な「家電」や、それを販売する家電系販売店の役割は決して小さくない。
参考記事:「歩く」市場をもっと活性化させよう!
https://www.nspc.jp/senior/archives/1384/
株式会社 日本SPセンター シニアマーケティング研究室 倉内直也
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