シニアって誰?
大切なのは「シニアの定義」ではなく、「変化」に伴うニーズ
「何歳からシニアか」という定義づけは難しく、50歳以上という考え方もあれば、
定年退職してからという定義の仕方もあります。さらに世界保健機構(WHO)の定義に従って、
65歳以上の高齢者をシニアと呼んでも差し支えありません。
しかし、シニアの定義はそれほど重要なことではありません。
塊としてのシニアの市場規模よりもむしろ個々のニーズに注意を払うことが大切だからです。
「変化」が起きるときには、必ずニーズが発生します。シニアマーケティングが注目を集めるのは、
シニア世代に様々な「変化」に伴うニーズが多く存在するからです。
- ●雇用状況の変化に伴う、可処分時間・可処分所得の変化
- ●子の独立による家族構成の変化。それに伴う住まい方の変化
- ●加齢に伴う、身体能力の変化
このような「変化」に伴うニーズにいかに対応できるかが、
シニアマーケティングの成否のカギを握ることになります。
シニアマーケティングは果たしてうまくいかないのか?
2008年前後、「団塊の世代が60歳に達し、定年退職を迎えることから、
シニア需要が爆発する」という目測に基づき、シニアへのアプローチがブームになりました。
団塊の世代は、常に時代を牽引してきた革新的なボリュームゾーンでした。
この世代は年齢の階段を上がるたびに、大きな消費をもたらしてきたのです。
このことを学習している市場は大いに湧き上がりました。
時間もお金も元気もある彼ら、彼女らに大きな期待が寄せられ、
「時間消費」「コト消費」「アクティブシニア」などの言葉が飛び交いました。
ただ、前宣伝ほど実際の興業が振るわなかったのも一面の事実でした。
その理由のひとつは、「部分」としてのアクティブシニアを「全体」と捉えてしまったことにあります。
100兆円とも言われるシニア市場が「アクティブシニア」によって消費されるという考え方は
ある意味で正しく、またある意味では大いなる誤謬でした。
私たちはシニア市場を「分けて」考えます!
その全体像を明らかにする手がかりとして、当研究室では、まずシニア市場の全体を鳥瞰できる、
大きなマップを描くことから始めました。
シニア市場を定量的に把握するために、シニア=65歳以上の高齢者とし、大きく4つに類型化する試みです。
すなわち、
の4類型がそれにあたります。
※1 「ギャップシニア」は2014年に日本総研が命名し、提唱した言葉。
「要介護というわけではないけれど、日常生活の中で諦めや我慢が積み重なっている」(日本総研HPより)状態で、
「できること」と「やりたいこと」とのギャップがある人たちを意味しています。
「放っておくと、介護のお世話になる可能性の高い人たち」と言い換えてもよいでしょう。
※2 「ディフェンシブシニア」は年金以外の毎月の定額フローがなく、堅実な暮らしぶりの層で、
「守り」中心の消費者をイメージして当研究室が命名しました。
シニア世代の全体像
シニアマーケティングと聞いてまず思い浮かべるのは、
両端に位置する「アクティブシニア」と「ケアシニア」でしょう。
わかりやすく、可視化できる市場だからです。
図1.シニア(高齢者)の市場セグメントと人口ボリュウム
※3 高齢者人口:65歳以上 3,626万人(人口推計 令和4年3月1日概算値 総務省統計局)
※4 アクティブシニア人口:就業人口:65歳以上 912万人(令和3年(2021年)労働力調査基本集計長期時系列表 総務省統計局)
※5 ケアシニア人口:要介護等認定人口:65歳以上 677万人(令和4年(2022年)1月末日暫定値 介護保険事業状況報告 厚生労働省)
※6 ギャップシニア人口:883万人(高齢者人口からアクティブシニア、ケアシニアを減じた数)÷1000×433.6(有訴者率)=883万人
有訴者率:65歳以上 433.6千人対(男性:413.2/女性:450.3)(令和元年(2019)年 国民生活基礎調査 厚生労働省)
※7 ディフェンシブシニア人口: 2037万人-883万人(ギャップシニア人口)=1154万人
「ディフェンシブ・シニア」と「ギャップ・シニア」は、合計すれば人口全体の6割に迫る、
マジョリティグループです。人口規模がそのまま購買力に結びつくわけではありませんが、
ボリュウムゾーンです。
この類型は今まで、あまりマーケティングの対象として意識されずにきました。
そのことがシニアマーケティングで成功事例を頻出しなかった要因の一つと言ってよいかもしれません。
「アクティブ・シニア」のニーズマッピング
図2.アクティブ・シニアのニーズマッピング
それでは、アクティブ・シニアを例に挙げて、さらに細かく「分けて」考えていきましょう。
図2.は「就労形態を維持しているかどうか」をx軸に、「モノ消費かコト消費か」をY軸に据えて、
2軸4象限にアクティブシニアのニーズをプロットしたものです。
そしてそのニーズを満たす財やサービスを白抜き文字で記しています。
ここまで細分化すればニーズと商品の立ち位置がよく見えてきます。
自社の商材やサービスが、座標軸のどのあたりに位置し、誰を見込客に設定すればよいかを理解する道筋の一つになるでしょう。
アクティブシニアに特徴的なのは、需要の多くがアッパー層のコト消費に集中する傾向があることです。
今までのアクティブシニアのイメージを踏襲しているとも言えます。
JR東日本の「四季島」などが典型例と言えるでしょう。
シニア市場を鳥瞰して1点にくさびを打ち込む
ここまでのことから、シニア市場がいかに多様性を帯びたものかが、よく理解いただけたかと思います。
アクティブ・シニアを例に取って論考してきましたが、他の3つの類型も同様に細分化されていきます。
市場とひとくくりにするのではなく、全貌を広く見渡したうえで、
座標軸の1点を深くドリリングすることは、シニア市場に限らず、今も昔も変わらないマーケティングの要諦です。
そのドリリングの手法として有効なのがコンテンツマーケティングの手法です。
株式会社 日本SPセンター
シニアマーケティング研究室 中田典男
※他の3つの類型、すなわち、「ディフェンシブ・シニア」「ギャップ・シニア」「ケア・シニア」についてのニーズマップは、White Paperでご用意しております。
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