2012年12月5日
シニアだけに通用するマーケティング手法などない。シニアにも通用するマーケティング手法があるだけだ。見込客は変わっても「マーケティング」は変わらない。この事実は、ずっと昔から世の中に溢れている広告コピー(ヘッドライン)を見ればわかる。
ところで、効果のある広告コピー(ヘッドライン)を考え出す手順はあるのか?実は、私たちには明快な(そして、普遍的な)手順が一つだけあるのだが、おさらいしておくと次のようになる。
手順1)「何を」箇条書き
手順2)「だれに」絞り込み
手順3)「どの順番で」優先順位
先ごろ行われた米大統領選挙を例に、この手順を確かめてみよう。投票前、ワシントンポスト(以下、WPと略)では、ゲーム仕立ての「候補者選び」をウェブサイトで公開していた。
↑いくつかの争点(WPの場合12)がABC順に並んでいて、有権者が関心の高いものを選んで、用意された設問に答えていくと、自分の意見に最も近い候補者を選んでメールで教えてくれる(Election Guide 2012)。
12の争点リストが、手順1)の「何を」箇条書きである(大統領選の争点がたった12というのも驚きだ。市販されている商品ではもっと多いかも知れない)。このリストから、有権者が関心の高いもの(matter to you most)を選んでいくのである。WPのガイドでは、関心の低い争点や設問はスキップできる。これが、手順2)「だれに」絞り込みである。WPの場合は、ピックアップした争点はすべて合算されるが、候補者が各地で行う選挙演説では、そうはいかない。時間に限りがあるので、訴求できるのは3つか4つがせいぜいだろう。ではどうするのか。「何を」(政策)は変えられない。地域によって、言う順番を変えるのである。たとえば、カリフォルニア州では「Avortion」をトップに、オハイオ州では「Economy」を、というように。これが、手順3)「どの順番で」優先順位である。
マーケティングなら普通だが、大統領選挙でこんな芸当ができるようになったのは、そんなに昔のことではない。たとえば、オバマが初当選した前々回の大統領選(指名争い)のレポートでは
民主党指名候補の座を目指すバラク・オバマ上院議員などは、州から州へ、予備選から予備選へ選挙戦を展開していくにあたり、マイクロ・ターゲティングを活用して、基本的かつ本質的な可変要素を大量に割り出し、ヒラリー・クリントン上院議員と必死の攻防を繰り広げているのである。
– 米大統領選で活躍する予測分析ツール――候補者らが有権者層の把握に利用(IT media 2008.03.13)
として、「オバマ氏の選挙戦には、やはり熾烈を極めた2004年の大統領選で、ジョン・ケリー上院議員のために有権者データモデルを作成したワシントンのデータ分析企業」が協力していると報じている。
マイクロ・ターゲティングて、いったい何をやってるのかというと、「各州の有権者データベースや人口調査資料といったさまざまなソースから情報を取得し、マーケティングデータと組み合わせて、所定地域における有権者の基本像を浮かび上がらせ」「自陣に引き入れられる可能性の最も高い無党派層に近づく最良の方法を模索」しているのだ。何やら呪文のような文句が並んで近寄りがたいのだが、やってることは、アマゾンがサイト訪問者に対して「お客様への本日のおすすめ商品」を選んで差し出す手法と、まったく同じである。これはまさしく、マーケティング手法そのものだ。
さて、シニア・マーケティングである。シニアに効果のある広告コピー(ヘッドライン)を考えろと言われたら、大統領選では「有権者」であった「だれに」のところに、「シニア」をもってくればいいのである。「何を」(商品情報)は変わらない。言う順番を変えるのである。逆に見れば、同じ商品であっても、「優先順位の組み替え」によって、見込客が変わるのである。実例は、古今東西いたるところに見ることができるが、今回は一つだけ。30年の間に、見込客がシニアから成人女性へと変化した、コーワの「ケラチナミン」をとりあげる。
↑ケラチナミン(乳状液)1984
言いたいこと(何を)をすべてヘッドラインにしてしまうお馴染みのコーワの広告。おばあちゃんの2行ずつのセリフ(+説明文)、最後に乳液タイプ新発売の告知を、これもおばあちゃんの言葉で。この頃、このような症状を「老人性乾皮症」と呼んでいました。
↑ケラチナミン2012
ヘッドラインには「30年の実績」を。若々しい女性の手や脚の写真のキャプションとして、成人女性が悩む症状を、女性の言葉で。見込客は、「おばあちゃん」から「成人女性」へと広がっています。症状は同じでも、今では「ドライスキン」と呼ばれるようになりました。
(津川義明)
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